生物資源学部 分子機能科学研究領域 機能食品学分野

研究内容

 私たちの研究室では、「健康・長寿」社会を目指し、がん・糖尿病・動脈硬化症などの各種生活習慣病罹患率を食事により少しでも減少させるための基礎研究に励んでいます。福井県は長寿県として知られており、それを支えているものの一つとして食慣習が考えられます。そこで、県内特産農作物について、長寿・健康に資する素材の抽出や健康機能性成分の単離・同定・定量・作用機構の解明などを通じて、当該食素材の健康効果に関する科学的立証を試みています。その研究成果は、県内農作物に付加価値を付与し、農業や食品産業など関連領域の活性化に寄与できるものと期待しています。また、微生物酵素などを利用して新しい機能性食品の創製にもチャレンジしています。 現在は、抗炎症性作用や血圧降下作用、血糖値調節作用に注目していますが、その他の健康機能性も視野に入れて研究を進めています。

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【研究手法と研究の流れ】
 機能性成分の単離・構造決定から細胞レベルの作用機構解析、疾患モデル動物への経口投与試験まで、天然物化学、生化学、分子生物学、タンパク質工学、薬理学などの研究手法を用いています。
(1)機能性成分の単離・同定
  食素材抽出物のカラムクロマトグラフィー分画と細胞実験や酵素実験による活性評価を繰り返し、
  単一の化合物として分離した後、さまざまな機器分析で構造を決定します。

(2)作用機構解析
  細胞実験により、活性発現作用機構の解明にも迫っています。

(3)動物試験
  活性化合物を疾患モデル動物に経口投与し、健康効果を明らかにします。

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【研究例】
① 特産農作物に含まれる抗炎症性化合物の単離・構造決定
 これまでに、ナツメや木田チリメンシソなどから抗炎症性化合物を見出しています。福井市小幡町地区(旧坂井郡棗村)にはナツメ農園があり、ナツメ乾燥果実は、漢方の大棗として知られています。木田チリメンシソは、福井市木田町地区にあった在来種の赤ジソで、濃い赤紫色をしており、梅干し作りに欠かせないものとなっています。これらの機能性成分については知見が少なかったことから、炎症性疾患に繋がる一酸化窒素(nitric oxide, NO)やスーパーオキサイド(O2-)の産生を抑制するような成分(抗炎症性成分)を探索しました。その結果、ナツメからは数種のトリテルペンを、木田チリメンシソからはグリセロ糖脂質を強力な活性成分として見出し、現在、作用発現機構の解明を進めています。
 
② 機能性成分の定量・季節変動の解析
 機能性成分は、作物品種や栽培時期によって増減すると予想されますが、そのような変動を解析した事例は限られていました。その理由は、それぞれの食素材における機能性成分の実体が不明であることによります。逆に言えば、機能性成分の実体が分かれば、素材中にどんな機能性成分がどれほどの量含まれているかが分かり、機能性についても定量的に解析することが可能となります。まず、モデル野菜としてホウレンソウを取り上げ、抗炎症性成分として、ジテルペンアルコールやジアシルグリセロールを解明しました。現在、これらの簡易定量法の構築に取り組んでいます。これが確立できれば、全国的に多種多様なホウレンソウについて、その抗炎症性を機能性成分量で追跡でき、どこの産地のどの季節の素材が抗炎症性に富んでいるか解析可能となります。主要な食素材でこのような解析ができるようになればと期待しています。
 
③ 微生物プロテアーゼの解析と機能性ペプチド生成への利用
 タンパク質をプロテアーゼ分解して得られるペプチドには、多様な生理活性ペプチドが含まれていることが知られています。中でも血圧降下作用を示すアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害ペプチドは有名な例であり、特定保健用食品に利用されているものもあります。福井県内土壌より分離された新種細菌が分泌するNPR-7は、キチン(多糖類)への結合配列をもつ大変珍しい特徴を備えたプロテアーゼです。現在その構造機能解析や生理活性ペプチド生成への利用に取組んでおり、ACE阻害ペプチド生成や自然発症高血圧ラット(SHRラット)への経口投与にて血圧降下作用を示す新しい加工品の創出に取組んでいます。

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福井県立大学 生物資源学部 分子機能科学研究領域 機能食品学分野
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