コラム求められる地域中小企業の経営革新

南保 勝

近年の構造変化を眺めてみると、エネルギー・環境問題、市場の多様化・高度化、労働力人口の減少など産業基盤を揺るがす様々な変化が進んでおり、その中で地域の中小企業も時流をうまく取り込んだ新たな産業分野への転換が求められている。  例えば、自動車の燃料がガソリンから電気へと転換期を迎え、従来の自動車関連部品メーカーもこれに対応することを余儀なくされている。こうした動きは、新たな技術や商品を持つ企業が、自動車産業へ参入するための一つの機会につながるであろう。また、このような動きは自動車産業だけではない。化石エネルギーから再生可能エネルギーへ、生産の集中から国際分散化へ、環境技術や循環型社会への注目など、今世界は大きな転換点に立たされているのである。つまり、中小企業にとっては、従来の産業システムや生産体系の変化、流通の高度化等の多様な変化の中で新たな経営革新が求められているわけであり、こうしたシステム転換が地域企業、とりわけ製造業にとって大きなチャンスを与えてくれる絶好の機会となるかも知れない。 具体的に地域における中小企業の可能性を探るとすれば、福井県はエネルギー関連施設の一大拠点であり、これを活かして環境技術の開発を集中的に進める、あるいは戦略的な支援を行うといった方針を地域全体で取り組むことはできないか。また、地域の農業分野でも変革が必要である。例えば、農のビジネス化、目指すべきは、ビジネスとしての農業、産業としての農業の確立である。その際、製品評価の指標でQCDSという言葉に注目したい。この言葉は、品質(Quality)、価格(Cost)、納期や入手性(Delivery)、対応やサポート(Service)の頭文字をとったもので、製品の調達・購入や商品開発の際の指標として活用されているが、農業分野でもこのQCDSを考え利用していく必要があるように思える。建設業も同様である。日本の建設業の技術や品質は非常に高い。今後、さらに国内需要が減少する中で生き残っていくには、建設需要が高まっている新興国など海外市場を狙うことも必要となろう。その際、品質だけではなくサービスや機動力(デリバリー)を売り物にすることも考えなければならない。その他、内需型産業の代表で地域を支える卸・小売・サービス業等も、大変革が求められている。今、協議が進行中のTPPなどの参加が具体化すれば、地域経済に依存度が高いこれら産業・企業は、これまで以上にグローバル化の影響を受けることが予想されるからである。つまり、「内なるグローバル化」に対し、こうした産業・企業では、先進国と振興国間での技術・ノウハウの相互移動、すなわちリバース・イノベーションの動きを逆手にとり、うまく活用しながら国内需要の掘り起こしに役立てる手法を検討すべきであろう。具体的には、自社の流通そのものを見直し、品質やコスト面で競争力の高い海外品にも目を向けること。そのためには、めまぐるしく変化する国際情勢に対しその情報収集力を高める意味からも、海外企業、海外市場との関係性強化を図る手立てを早急に検討することが重要となろう。

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