コラム2015年、地方創生への不安と期待

井上 武史

 12月14日に行われた衆議院総選挙の結果、自民党連立政権が継続することになった。約2年続いた「アベノミクス」と呼ばれる経済政策も、引き続き推進されていくだろう。同時に、積年のさまざまな懸案事項についても正面から対策を進め、具体的な成果の獲得を図ることが期待される。
 2015年に地域の視点で重視されるのは、地方創生であろう。これは「ローカル・アベノミクス」と呼ばれる現政権の新たな取り組みであるとともに、「東京一極集中の是正」という長年の課題への対応でもあり、いずれの視点でも重要と考えられている。
 しかし、両者は必ずしも同じ方向性を持つものではない。なぜならば、ローカル・アベノミクスでは大都市圏で先行した経済成長の恩恵を地方に波及させることが重視されているが、これまで東京一極集中が進んできた主な要因は東京を始め大都市圏が成長の核になったことにあるからである。したがって、ローカル・アベノミクスが地域経済の成長をもたらしたとしても、それが東京一極集中の是正に結びつくとは限らないだろう。東京一極集中を是正するためには、東京ではなく地方から日本の経済成長を牽引する構造に改めるくらいの姿勢が必要ではないだろうか。
 この点に関連して、地方創生の具体策について考えることにしたい。報道で明らかになった具体策に対して、筆者は不安と期待のいずれも持っている。不安の1つは、交付金構想である。これは、地域の消費を活性化させるものと、人口減少などですぐれたアイデアを出した自治体に配るものの2種類がある。例えば、前者は商品券や旅行券、後者はIターンや企業誘致などが交付対象になるという(12月18日付朝日新聞)。これらは、大都市圏の成長の恩恵を地方に波及させるものであるとともに、地域振興券や頑張る地方応援プログラムなどの前例もある。そのため、東京一極集中の是正まで見すえるならば、交付金構想が十分な成果に結びつくかどうか、不安である。
 一方で、期待できる施策もある。それは、本社機能の地方移転に対する優遇措置である。かつて「地方分散政策が東京一極集中を招く」という逆説的な状況が起こっていることが注目されたが、その原因は東京における本社機能の強化にあった。今回の地方創生では、管理部門などの本社機能の移転に伴う社員の転勤などで地方拠点の雇用が増えた場合、法人税額が控除されるなどの優遇措置が検討されているという(12月18日付日本経済新聞)。これは、従来にない新しい取り組みであり、実際に成果を挙げられるかどうかは未知数だが、東京一極集中の是正まで見すえた施策として筆者は期待を持っている。
 こうしてみると、地方創生については、短期の視点と長期の視点、大都市圏と地方圏の関係、そして地方の役割と国の役割など、トレードオフの問題を含む複雑な構造を理解したうえで、発想の転換が求められる。不安と期待が入り混じるなかで、2015年は地方創生がどこまで成果をあげられるか。期待が現実になることを願っている。

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