コラム配偶者控除と女性の就業

佐々井 司

 最近全国を騒がせている目立った話題と言えば、電通職員の過労死、鳥取の大地震、築地市場の豊洲移転、五輪整備費、天皇陛下生前退位、ノーベル賞、原子力発電所の再稼働などでしょうか。他方、これらに比べれば地味ですが、税制上の配偶者控除を見直す議論も俄かに活発になりました。
 私自身、父母共働きでしたし、妻ともずっと共働きで現在に至っているので、個人的には縁の無い制度なのですが、私の周囲にはこの制度が変わることにより家計に影響が出てくるのではと心配する夫婦やパートやアルバイトの雇用を見直す必要が出てきそうな経営者の知人もいることから、今後の動向が気になります。ただ、配偶者控除に関する見直し議論はかなり以前からあります。もとは、私もまだ生まれていない1961年に創設された制度です。夫が働きに出て、妻が専業主婦というサラリーマン世帯が大都市を中心に増え始めていた時代に、家庭内で家事を担う妻の役割を夫の所得から控除するという形で評価するために創設されたしくみです。半世紀の間の日本社会の変化を鑑みると、これまで大した見直しがされて来なかったことのほうが不思議です。ここ数十年来、とりわけバブル経済が終焉したころからでしょうか、制度疲労を指摘する向きも多くなっていました。結局、来年度の変更は見送られたものの、すでに今月(2016年10月)から、社会保険法上の扶養扱いになるための基準が変更されており、税制上の取り扱いについても遅かれ早かれ何らかの変更は避けられない状況です。
気になるのは、配偶者控除の廃止や見直しが誰のためで何のためなのか、しっかりと整理された議論を割愛して(しかるべきところでは話し合っているようですが、国民的な議論にまではなっていません)、「一億層活躍社会」「働き方改革」の旗印のもと"女性の希望に叶った"働き方の実現に寄与することがあまりに強調され過ぎているように思えることです。人口減少による労働力不足を懸念してか、女性のさらなる活躍を期待する報道が多いのですが、今回の配偶者控除の議論への注目がその点だけに集まってしまうと、本質的な課題を見落としてしまうような気がします。
 先日、昨年実施された平成27年度国勢調査の確定結果が公表され、選挙区割の変更作業が本格化しました。だから、というわけでもないのですが、本コラムの最後で、人口関連の統計を通して女性の就業状況について概観してみます。2015年の女性の就業者数は2,754万人で、戦後最多です。過去15年間で女性就業者は約300万人増加しているのですが、その増加に最も大きく貢献しているのが、配偶関係別では未婚の女性です。雇用形態別ではよく言われるように、パート・アルバイトなどのいわゆる非正規雇用が、役員を除く全雇用者の過半数を占めており、正規雇用者より多くなっています。なかでもパートの増加が近年の女性雇用者数の増加を支えており、正規雇用者は逆に微減傾向にあります。他方男性はというと、過去15年間の雇用者数が3,200万人前後でほとんど変わらず推移する一方で、正規雇用者を200万人近く減らしており、男性雇用者数全体に占める非正規雇用の割合が30%にまで上昇しています。
 配偶者控除などの雇用に係る制度を見直せば、あとは個々人の自助努力で"希望に叶った"働き方の出来る職に就ける社会ではないようです。女性だけの問題ではなく、男性の問題でもあることは言を待ちません。

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