コラム「改めて、海外展開を考える」

松尾 修二

 2年前、初めて輸出をしようと考える企業を念頭に、海外展開のすすめ方について原稿を書いたことがある。今年の初め、ある方から、実際に輸出を始めようとしている企業の方が、その原稿を「参考になる」と手元に置いておられる、という話を聞いた。書いた原稿がお役に立っているようで大変うれしく、ありがたいことである。このメールマガジンの読者にも海外展開に取り組んでいない方が
おられることだろう。そこで、改めて、海外展開について、ここで書いてみることにした。

 海外展開には、輸出、海外での生産拠点や販売拠点の設立、生産・販売・技術開発などの海外企業との提携、といった形態がある。最近ではインバウンド対応と呼ばれる、訪日客への売り込みを海外展開とみることもできる。福井県内にも、既に何年も取り組んでいる企業もあれば、今検討している企業、そして、「海外は関係ない」と考えている企業もあるだろう。

 しかし、よく言われることだが、日本よりも海外、特にアジアの方が、今後の成長が見込まれている。例えば、経済成長率について、国際通貨基金(IMF)の予測(2016年10月発表)では、日本は2017年は0.6%で、その後2021年まで1%未満にとどまるとされている。これに対し、世界全体は2017年3.4%、新興国・地域全体は4.6%、そしてアジアの新興国・地域では6.3%となっており、2021年までわずかずつ増加し続けると予測されている。日本の企業が今後も事業を続け、発展させるためには、日本にとどまらず、海外、特にアジアの新興国・地域の成長を活かすことが一つのカギだといえる。

 海外展開の効果については、『中小企業白書』2016年版に、海外展開中の企業を対象にしたアンケート調査の結果が載っている。回答が最も多かった効果は「売上の拡大」であった。海外展開のタイプ別には、輸出企業の72.2%、海外生産拠点を持つ企業の50.2%、海外販売・サービス拠点を持つ企業の56.5%、インバウンド対応をする企業の67.6%が「売上の拡大」効果を感じているという。次いで、「海外の新市場・顧客の開拓」を、輸出企業の39.9%、海外生産拠点を持つ企業の34.9%、海外販売・サービス拠点を持つ企業の55.5%、インバウンド対応をする企業の26.5%が挙げた。3番目には、輸出やインバウンド対応を行う企
業では「自社のブランド・認知度向上」、海外生産拠点を持つ企業では「コスト削減」、海外販売・サービス拠点を持つ企業では「海外市場の情報の蓄積」と、形態によって見方が分かれた。海外展開をしている企業は、実際にこうした効果を感じているのである。

 他方、海外展開を行っていない企業の理由も、前出のアンケートで調査された。回答が多かったのは「国際業務の知識・情報・ノウハウがない」「国際業務に対応できる人材を確保できない」「現地パートナー、商社等が確保できない」の順であった。

 こうした課題への対応は、まずは公的支援機関や、海外展開業務を助ける企業・個人を活用するのがよい。福井県内にも支援機関はある(当研究所もその1つである)。相談をしたり、セミナー等に参加したりすることで、「国際業務の知識・情報・ノウハウ」の収集や、「国際業務に対応できる人材」の育成に活用できる。現地パートナーや商社等は、実際のマッチングの場である商談会や見本市に参加して探すことができる。商談会や見本市の情報も、支援機関が提供している。海外展開について検討する際には、こうした機関を利用してみることから始めるとよい。

 もちろん、検討の結果「海外展開はしない」という判断をすることもあるだろう。ただ、輸出やインバウンド対応は、海外に部門を作る必要もなく、比較的取り組みやすい。また、海外への拠点設立については、全国をみると、製造業では大企業から中小企業や町工場まで、サービス業では流通・小売業からレストラン、カフェ、ベーカリー、学習塾といった幅広い分野に動きが広がっている。農産物の海外生産に取り組むところもある。これまで考えていない方にも、また現時点では海外展開はしないと判断している方にも、海外展開の可能性について、検討しない手はない、と申し上げてみる次第である。

 

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