コラム「今春の人事異動から考える」

佐々井 司

 日本では春が最も人が動く、すなわち人口移動の起こる季節です。学校はもちろんのこと、ほとんどの事業所が年度単位で稼働しているからに他なりません。ここ地域経済研究所においても3月末で4人の研究員が転出し、4月初頭に2名の研究員が新たに配属される大異動がありました。所長も南保教授に代わり、地経研も中身が随分と様変わりしましたので、皆様には是非ご来所いただき、多くのご教授・ご鞭撻を賜れば幸いです。お待ちしております。
さて、春の人口移動がいかに多いかは人口関連の統計でも垣間見ることができます。適当な資料として、総務省統計局『住民基本台帳人口移動報告』が挙げられます(http://www.stat.go.jp/data/idou/index.htm)。タイトルの通り住民基本台帳上の住所地の変更届の情報をもとに集計され統計として毎月公表されています。
1年間に届け出のある市区町村間の住所地移動件数は、近年500万前後で推移しています。出生数は昨(2016)年とうとう100万人を下回った可能性があり今後どこまで減り続けるか現段階では分からない状況です。死亡数は人口の高齢化に伴い1960年代後半から増加基調にあり、現在では年間130万人強に達しているものの、団塊世代の方々が90歳を迎える2040年前後に年間死亡者数のピーク期が来ると、先般公表された国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」(http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp_zenkoku2017.asp)は示しています。その数、約170万人ですから、わが国における人口動態のなかでも人口移動がいかに大きなインパクトを持っているか、お分かりかと思います。
 年間の移動数が500万件と書きましたが、人口比にすると100人に4人が動いている計算になります。性別でみると男性が50%強、年齢でみると20歳代と30歳代前半で50%以上を占めています。そして季節でみると3月・4月の2か月で1年間の3分の1強の移動が生じています。このような人口移動の構造上の傾向は高度経済成長の時代からほとんど変わっていません。一方で顕著な変化もみられます。人口移動総数の減少、とりわけ男性の都道府県間移動の急減です。
 人口減少と高齢化によって移動する年齢帯の人口が減っていることが主な要因ですが、男性の県を跨ぐ移動が減っているのは経済環境とりわけ雇用情勢に影響を受けているからだと推察されます。
 人口が動くこと自体が経済と強く相関しています。人口減少と少子高齢化という趨勢は、同時に人口移動の減少に拍車をかけるため、国全体の経済成長にはマイナス要因になる可能性があります。とは言え、"一億総活躍社会"が動けない人や動きたくない人をも無理やり動かすような社会とならないよう、気を付けなければいけないかもしれません。

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