利益構造を理解しておく

木下 和久

 11/18のニュースで、新型コロナウィルスに感染し、福井県内の医療機関に入院または宿泊療養施設に入っている人がゼロになったことが報じられました。一方で、今後予想される感染拡大による第6波に備えて、体制を強化し、病床・宿泊療養施設を確保しつづけることが報告されています。
 感染者が減少したことは、とても喜ばしいことですが、利用されない空き病床・宿泊療養施設を確保しつづけることは、医師や看護師、医療施設をはじめとする貴重な医療資源であるヒト・モノ・カネを固定化し、コロナ対応以外の医療行為へ有効に活用できない状態をつづける、ということでもあります。同じような状況を企業経営に置き換えて考えると、経営者を非常に悩ませる事態であることが理解できます。
 第6波がいつくるか、どの規模になるか、どの程度つづくかなどは不確定な要素が大きく、実際におきるまでわかりません。このような不確実性が高い事態に備える場合、全国各地で多くの病床を確保しておこうとしているように、企業も事態に問題なく対応できるよう、対応能力を大きくしておこうとする傾向があることが指摘されています。
 これは、不確実性が高い程、稼働率が極端に高くなる可能性が高まることや、対応能力の限界近くまで稼働率が上昇すると、小さな問題が大きな障害に発展して、本来の能力が発揮できなくなる可能性が高まるためです。これには混雑コスト(cost of congestion)が関係しています。たとえば、交通量が多く混雑している道では、トンネルや坂道などちょっとしたことで渋滞になり、通過する時間が大幅に増えてしまうことからも想像できると思います。
 一般には、稼働率を高める程、コストが安くなるため、経営的には望ましいと考えられています。しかし、この混雑コストを考慮すると、稼働率が高い状態では、混雑コストが発生するリスクが高く、稼働率の上昇にともなう収益の増加を減らしてしまう可能性があります。とは言え、稼働率が低くなれば、大きな対応能力を用意するための費用をまかなうことができず、赤字になってしまいます。実際、コロナ禍のもとで売上が減少し大幅な赤字となる大きな要因の一つは、稼働率の低下です。顧客からの要望に応えられるようにと、日常的に対応能力を高めている組織ほど、コロナ禍による需要減少によって大きな打撃を受けているはずです。
 コロナ禍のような異常事態に打てる会心の対策は多くないかもしれません。それでも対策を考えるためには、自社の利益構造を理解することが大切になります。これにはCVP分析(損益分岐点分析)が有効です。売上高の変化にあわせて変動費・利益がどう変化するか、固定費はいくらか、損益分岐点はどこか、どうすれば利益構造を変えることができるかなどを理解する助けとなり、効果的な対策を考える基礎となります。
 資源は有限です。経営にとって重要なのは、有限の資源であるヒト・モノ・カネをいかに有効に配分し活用するかです。一方で、英智は無限とも言われます。有限の資源を活かし、知恵を出しあい、工夫を重ね、難局を乗り越える英智を創造し、実行することができるかが、生き残りと成長にかかっています。企業が存続するためには、利益を出すことが重要です。ぜひ会計情報を用い経営に活かしてください。まずは己を知ることからはじめてはいかがでしょうか。

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