「沖縄の人口動向から地域の魅力について考える」

佐々井 司

 今月も様々な報道がありました。「ダチョウ倶楽部」上島竜兵さんの逝去、国政選挙で選ばれた方々の問題発言の数々、東京スカイツリー開業10周年、「英語教育実施状況調査」結果の公表、「運転技能検査」の開始などなど。これらの出来事をめぐって個人的にいろいろ考えさせられましたが、本コラムでは迷った挙句「沖縄」を取り上げることにしました。といいますのも、今月15日(日曜日)は周知のとおり、沖縄が本土に復帰してからちょうど50年目という節目の日でした。私も今年、4年ぶりに「地域経済研究所」に戻ってまいりました。ちょっとした因縁を感じることもあり、ちょうど良いテーマかと考えた次第です。

 メモリアル・イヤーということもあり沖縄に関する記事や番組は平年より多くなっていると思いますが、現在放送中のNHKの朝ドラも沖縄が舞台の『ちむどんどん』。沖縄ことばで、チム(肝=心胸・心)が高鳴る様子を意味する状態のようです。かつて沖縄に旅行した際、『高等学校琉球・沖縄史』という教科書を国際通りにほど近い古本屋でたまたま見つけたので興味本位で買ってみたところ、自分が高校時代に学んだ“日本史”とはかなり異なっていることに、相当『ちむどんどん』したことを思い出します(使い方がちょっと間違っているかもしれませんが)。

 そんな沖縄には本土と異なる様々な特徴があります。その一つが「人口」です。5月は「子どもの日」、「母の日」がありますが、総人口に占める子どもの割合、母親の割合が47都道府県中最も高いのが沖縄県です。婚姻率や合計特殊出生率が本土返還以降、ずっと全国トップです。平成17年版の厚生労働白書のコラム「沖縄県の出生率が高い理由」では、(1)共同社会的な精神がまだ残っており、子どもを産めばなんとか育てていける。(2)男児後継ぎの意識が強く残っているので男児が生まれるまで産児を制限しないという説がある、と分析されています。政府刊行物にしてはかなり思い切った論考です。そして、出生数から死亡数を引いた自然増加数がプラスなのは、2016年以降沖縄県だけになっています。さらには、転入超過数(転入者から転出者を引いたもの)もプラスで推移していることから、沖縄は現在全国で唯一、人口が増加している県です。対照的に、自然増加数を大幅に上回る転入超過数によって人口を増やしてきた東京都では、コロナ禍によって転入超過が激減したことから、社人研による将来推計人口よりもかなり早いタイミングで人口減少に転じてしまいました。しなしながら、沖縄が単に“優等生”かというと、そうではありません。離婚者割合、嫡出でない出生や婚前妊娠による出生割合が高いことは、少なくとも“本土”では一般的に“良くないこと”とされています。平均寿命は他地域と比べて伸び悩んでおり、返還直後の男女とも全国1位から徐々に順位を下げています。

 このように多面的な顔を持ち、かつ変化の激しい沖縄ですが、人を引き付ける魅力は依然健在のようです。“沖縄は特別だから”と考える向きもありますが、しっかりと向きあってみると、地域の魅力とは何なのか、案外その本質が見えてくるような気がします。

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