調査研究令和元年度

地域経済部門

研究課題

福井県における鋳物業の発展が、地域産業の振興に与えた背景を探る

研究内容

 中小製造業が集積する福井県には、技術、製品、特異な経営スタイルなど多様な面できらりと光る企業も多い。その一例が、福井県坂井市春江町にある株式会社川鋳である。同社の製品群は、普通鋳鉄をはじめとして、FC-350クラスの高級鋳鉄や強度が高く耐圧・耐地上衝撃に優れる球状黒鉛鋳鉄など、高度な技術を要する製品で占められている。ちなみに、鋳造部品の不良率は業界平均で10%と言われるが、同社ではその100分の1(0.11%)に過ぎない。創業当初から「単なる“鋳物屋”ではなく“鋳物メーカー”を目指す」という同社の思いは、職人の技や感性をコンピュータで管理する同社独自の「湯流れ・凝固解析システム」として構築された。ここでいう湯とは溶けた金属を指しているが、その流れにより鋳造部品の内部のどこに空洞ができているのかをコンピュータで予測することで、これにより金属が固まる前にその部分を補強することが可能となった。まさに、最先端技術と職人の合わせ技により業界No1の地位を守り続けているのである。
 では、当地福井県でこうした最先端の鋳物メーカーがいったいどうして誕生したのか。元々福井県は、近世以降、鋳物業が盛んで、昭和時代にはあの繊維産業の基盤を担う織機製造には必要不可欠な素材が鋳物であった。
 本研究は、こうした鋳物業の栄枯盛衰を歴史経路で辿り、繊維産業をはじめとする福井県の主要産業の発展にどのような影響を与えたのかを明らかにしたい。

研究員
  • 南保 勝(福井県立大学地域経済研究所長、特任教授)
研究課題 若狭地域の産業活性化の実現に向けた産官学連携のあり方に関する調査研究(新規)
研究内容

 北陸新幹線の開通が迫り、若狭地域の産業や経済を再評価する時期にあると考える。若狭地域の恵まれた伝統や文化、自然環境をベースに息づいた地域固有の産業に光を当て、観光のみならず、地域ぐるみの地域活性化を実現するための方策を模索する。 域外の各機関との緩やかなネットワークと、域内における強いネットワークの構築を意識した産官学連携のあり方を明らかにする。

研究員
  • 杉山 友城(福井県立大学地域経済研究所准教授)
研究課題 福井県企業の事業承継の実態に関する調査研究(新規)
研究内容

 中小企業の事業承継問題への関心が年々高まっている。円滑な事業承継の実現(後継者不在問題の解決)は、わが国の中小企業における重大な経営課題の一つといえる。また、廃業による、GDPや労働市場の縮小は、日本経済に大きなダメージを与えることは言うまでもない。 そうした中、全国と比較して、後継者不在率が低い福井県企業の事業承継に関する実態を調査研究することで、事業承継問題を解決に向かわせるための方策とは何か示唆を得る。

研究員
  • 杉山 友城(福井県立大学地域経済研究所准教授)
研究課題 社会経済・統計データの編纂(継続)
研究内容

 地域が直面する様々な課題について、その方向性を見出すための基礎資料として、自治体や支援機関、さらには民間企業のマーケティング活動に資するため、2019年度も社会経済・統計データを作成し、データの蓄積と活用を図る。

研究員
  • 杉山 友城(福井県立大学地域経済研究所准教授)
研究課題 日本型DMOに関する調査研究(新規)
研究内容

 人口減少が進むなか、地方創生の切り札として観光振興による交流人口の拡大やまちづくりの推進を掲げる地域が多くなっている。そのようななか、一定の広がりを持った地域において観光振興を総合的に推進する組織としては、従来は行政が観光協会等を設置してきたが、ここ数年、観光庁が推進する日本型DMOの設置が相次いでいる。平成30年度末段階で、日本版DMOは123法人、日本版DMO候補法人は114法人となっており、福井県においても「(株)まちづくり小浜」が日本版DMO、「勝山市観光まちづくり(株)」が同候補法人に登録されている。これらの先行するDMOには様々な成果と課題が生じており、今後DMOを設置する際にこれらの取り組みは大いに参考になるものと思われる。
そこで、各地のDMOの現状と課題を整理し、令和5年春の北陸新幹線敦賀開業を控え、本県においてDMOを核にした観光振興を推進するに当たっての方向性を具体的に提言したい。
・日本型DMOの現状把握
・日本型DMOの特徴と課題の考察
・今後の方向性(提言)

研究員
  • 江川 誠一(福井県立大学地域経済研究所講師)
研究課題 空き家のリノベーションによる新価値創造に関する調査研究(新規)
研究内容

 各地で空き家の存在が問題化している。景観や環境の悪化のみならず、防犯性や防災性の低下につながり、まちづくりを進めるに当たって大きな障害ともなっている。空き家の所有者から見ると、維持管理や税負担に悩みながらも、先祖・親戚・近所への配慮が欠かせず、いざ活用・処分するとしても市場価値が見出せないまま放置を続けるという状態が多いと聞く。このようななか、空き家をリノベーションして活用する事例が各地で生じている。
そこで、空き家がリノベーションにより新しい価値が付加された事例について、その所有者や入居者、利用者から見てどのような価値が創造されたかに焦点を当てて調査し、今後の空き家対策の方向性の一助とする。
・空き家のリノベーションに関する事例調査
・空き家のリノベーションで生まれた新しい価値の考察
・今後の方向性(提言)

研究員
  • 江川 誠一(福井県立大学地域経済研究所講師)
研究課題 地方創生戦略の検証と改訂に向けた基礎的研究
研究内容

 2015年に策定された福井県における地方創生戦略「ふくい創生・人口減少対策戦略」は、その総合評価と第2期に向けての改訂作業の時期を迎えている。戦略策定から5年の間に福井県では様々な施策が講じられ、重要業績評価指標(KPI:Key Performance Indicator)の多くが目標を達成する見通しである一方、人口減少と少子高齢化には歯止めがかかる兆しが未だみられていないことから、改めて戦略のあり方が問われている。地域の人口ビジョン、および創生戦略の検証と改訂には、各地域における人口動向に関する詳細な実態把握ならびにそれらを規定する社会関連要因の的確な分析が不可欠である。内閣府の第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、結婚と出生、人口移動、高齢化、外国人等の人口動向と不可分なテーマが主軸となっている。今年度の調査研究では、これら重点課題を包括的に取り上げ、「ふくい創生・人口減少対策戦略」の検証と改訂に寄与する成果に結びつけたい。定量的な分析には、第1期で実施された各調査データを再分析するほか、政府統計、各地域が実施する住民アンケート調査の結果等を活用する。また、今年度以降に新たに実施する現地ヒアリング調査等の結果を用いて定量分析の結果を補足する。
なお、本研究は、国立社会保障・人口問題研究所や東京大学地域未来社会連携研究機構の関連事業とも連携し行われる予定である。また、福井大学がCOC+で行っている地方創生推進事業との連携も検討している。
本研究を通じて得られた知見は、今年度参画する福井県、ならびに県下複数の市町において展開される地方創生関連事業のなかで効果的に活用されるよう努めたい。

研究員
  • 佐々井 司(福井県立大学地域経済研究所客員研究員)
研究課題 福井県における外国人労働者の動向分析:多文化共生による地方創生の可能性
研究内容

 現在内閣府で検討中の第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略には「多文化共生」が新設される見通しである。今後福井県においても、国が整備する諸支援制度のもとで外国人材受け入れによる地方創生の可能性を検討することになるであろう。
本プロジェクトは、平成30年度「福井県ものづくり産業における外国人材採用・活用の現状と課題」の後継事業として、昨年度に引き続き、ものづくり産業における現状と課題の分析に注力する。他方で、今般の入管法改正等によって今後外国人労働者の動向に大きな変動が見込まれる産業分野においても現状分析を行い、「ふくい創生・人口減少対策」に外国人材が寄与する可能性について考察を行う。

研究員
  • 佐々井 司(福井県立大学地域経済研究所客員研究員)
研究課題 戦後農政の展開と協同組合 -全中所蔵資料の整理を通して-
研究内容

 全中(全国農業協同組合中央会)の協同組合図書資料センターが大幅に縮小されることになり、国文学研究資料館をはじめ、いくつかの機関に移管されることになった。しかし、多くの農協をはじめとする協同組合関係資料が未整理の状態となっており、移管先も確定していない。これらの中には、①戦後の農協設立に関する資料、(2)農業政策をはじめとした第一産業政策に関する資料、(3)農協を中心とした協同組合の組織、事業、経営に関する資料等が含まれている。しかも、そのほとんどが未解明の資料群であり、協同組合論、農業史学、農業政策論、農業経営論などにおいて学術的な価値を有するものが多く存在すると思われる。
本研究においては、これら未整理・未解明の資料の整理、具体的には一次資料の目録作成を行うことにより、戦後農政の展開と農協を中心とした協同組合が果たしてきた役割に関する研究を進めていくための基盤整備を行う。
本研究は、2019年度科学研究費(基盤研究(B))の研究分担者として参画するものである。

研究員
研究課題 北陸地方の女性就業とキャリア形成に関する研究(継続)
研究内容

 本研究は、昨年度の継続として進めるものである。北陸地域では女性就業の比率は高いが全体的に女性の活用が遅れていると言われる(例:女性の管理職比率が低い)。その要因として企業や団体が女性の活用に積極的でないこと、女性従業員自身の上昇志向が低いことが挙げられた。昨年度は企業の女性活用に焦点を当て、14年前と同じ項目について企業にアンケート調査をすることで、女性の活用への取り組みや女性活用の意識の変化について分析した。その結果企業の女性活用の意識や女性活用の取り組みについて14年前に比べ進捗がみられることを検証した。

今年度は、女性従業員自身の就業意識や上昇志向について同様の調査し分析を行うことで、女性活用の課題を働く立場から明確にしていく。
研究員
  • 中里 弘穂(福井県立大学キャリアセンター特命教授)
研究課題 地域産品の販路拡大に関する研究
研究内容

 本学の立地する永平寺町は地元産品を“SHOJIN”という統一ブランドで販路拡大や地域の誘客、知名度向上を企画している。本研究では福井県の近隣地域の地域産品の販路拡大や知名度向上策を調査することで地域産品の販路拡大における課題を分析し、地域産品のブランド化、販路拡大への貢献を目指すものである。 調査対象としては「かんてんぱぱ製品」(長野県)、「大門素麺」(富山県)、「加賀棒茶」(石川県)他を考えている。

研究員
  • 中里 弘穂(福井県立大学キャリアセンター特命教授)
研究課題 福井企業における先進的管理会計実践の探究
研究内容  福井で活躍している企業に対して聞き取り調査を行い、管理会計の視点から、その企業の競争力の源泉を探る。例えば、アメーバ経営の導入・実践や、製造現場における会計の効果的な活用、実務における管理会計の実践事例など、先進的・特徴的な事例の調査を行う。当面は事例研究の蓄積を行い、この研究結果を通じて管理会計学における理論的貢献の可能性について検討する。
研究員
  • 木下 和久(福井県立大学経済学部経営学科准教授)
    地域経済研究所客員研究員である上總康行名誉教授と共同で調査研究を行う。

アジア経済部門

研究課題 1.不確実性を増す世界経済におけるアジアの動向と企業戦略の新潮流に関する研究(新規)
研究内容

・結びつく経済と対立する政治~そのアジアにおける現状と影響に関する研究

ここでの「結びつく経済」とは主に、①TBT協定を嚆矢とする規格認証制度の国際標準化の加速、(2)地域経済連携協定の増加などにみられる連結性の拡大・強化、(3)グローバルバリューチェーン(GVC)などにみられる企業活動のグローバル化、などの現象を意味する。一方、「対立する政治」とは、①米中貿易戦争にみられる政治的イデオロギーの対立・覇権争い、(2)BrexitにみられるEUの地域統合における「民主主義の赤字」問題や移民排斥の動きなど世界各地に広がる「社会的公正」に関する問題、(3)保護主義の台頭、などを意味する。

・新たな時代における企業の国際戦略に関する研究

こうした中、国連による「ビジネスと人権に関する指導原則」(2011)および「持続可能な開発目標(SDGs)」(2015)が策定・採択され、グローバルな経営上の規範としての認識が高まっている。国連のこうした動きはこれまで見過ごされてきた国境を越えて行われるビジネスの倫理的課題について企業の対応を迫るものでもある。

本研究では、まず、上記に関する世界経済およびアジア経済の動向を考察する。同時に、SDGsへの対応やアジアなどの新興国を活用したグローバル展開など、新たな時代に向けた企業のグローバル経営戦略について、先行研究や事例を整理するとともに考察を加える。最後に、県内企業等への適応の可能性と課題について提言を行う。

このほか、昨年度に実施した「福井県および北陸における外国人材の採用・活用に関する調査・研究」等についても継続的に取り組む予定(1.に含まれる可能性あり)。

研究員
  • 池下 譲治(福井県立大学地域経済研究所教授)

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