調査研究

教員研究

研究課題

北陸新幹線の福井延伸に伴う地域経済・都市構造の変化と政策的対応に関する調査研究(1)

研究内容

 福井県立大学地域経済研究所では、2023年度から3年間かけて、北陸新幹線に関する研究プロジェクトを立ち上げることにした。1年目の今年度は、北陸新幹線だけではなく、東北新幹線や九州新幹線などの全国の他の新幹線と地域に関する既存文献の整理を行い、また北陸新幹線の福井延伸による経済効果の推計や新幹線への期待や懸念などについての各種のアンケート調査結果や政策文書を整理する。その上で、既存開業駅および2024年3月に開業する区間を対象に、地域経済、都市間関係、都市機能、都市内部構造などについて、統計データの収集と分析、地図作業といった基礎調査を実施することにした。このように、北陸新幹線の金沢・敦賀間開業前の地域経済および都市構造の現状分析を行うことが、本研究の主たる目的となる。

研究員
  • 松原 宏(福井県立大学地域経済研究所長、教授)
研究課題

外国人材の県内定着に向けた実態調査

研究内容

 日本の人口は減少が続いている。今から 20 年以上も前から様々な少子化対策が講じられてきたが、出生率を回復させるような明示的な効果は一向にみられない。少子化に誘引される若年労働力の減少は日本経済の今後を悲観視させる大きな要因の一つとなっていることから、労働力不足に対する不安を解消することが短中期的には喫緊の政治課題ともなっている。このような国情のもとで、近年外国人労働力への期待が高まっている。出入国管理に係る制度の改定や労働基準の変更等を含め、日本における外国人を取り巻く社会環境は常に変わり続けることが見込まれる。また、地政学的な日本の位置づけの変化が、外国人の動向に量的・質的な影響をもたらすと考えられる。日本人人口の少子高齢化と減少が前提となるこれからの社会で、地域社会は外国人とどのように向き合えばよいのか。そして何よりも、私たち一人一人が今後、海外から日本に来る外国人の方々とどのように付き合っていけばよいのか。こうした問題意識の下、本研究は、外国人人口に注目が集まる人口学的背景、外国人人口の動向と就業状況、日本国内で展開されている外国人定着に向けての取り組み等について、現時点での状況を考察し、得られた知見を共有するものである。

研究員
  • 佐々井 司(福井県立大学地域経済研究所教授)
研究課題

新型コロナウイルス感染症の拡大が地域に与えた影響と、その後の地域経済のあるべき姿に関する一考察(新規)

研究内容

 2020年に入り急拡大した新型コロナウイルス感染症は、地球規模で多様な影響を与えている。各国の状況をみると、医療、教育、暮らしなどの社会活動は無論、それに伴う経済活動への影響は計り知れない。2020年4月、国際労働機関(ILO)では、新型コロナウイルス感染症拡大を「第2次大戦後最悪の世界的な危機」と形容し、その影響で、2020年第2四半期には全世界の総就労時間が6.7%減少するとの予測を発表した。これは、労働者の実数ベースで1億9500万人が職を失うことに匹敵する。もちろん日本経済、とりわけ福井県経済への影響も大きく、ホテル・旅館などの宿泊施設や飲食店、卸売・小売業などを中心に深刻さを増し、徐々に製造業や建設業へも拡大している。
 こうした状況を踏まえ、本研究は、まず第1に新型コロナウイルス感染症拡大が地域の産業・企業・暮らしなどの面でどのような影響を与えているかを整理する。第2に、こうした経験を踏まえ、地域経済を支える産業・企業、そして暮らし方が将来的にどのように変化すべきなのか。特に、本県の経済を支える産業活動面での将来のあるべき姿については、業界別に踏み込んだ形での提示を行い、そのための政策についても若干のコメントを加えたい。

研究員
  • 南保 勝(福井県立大学地域経済研究所長、特任教授)
研究課題

福井県における鋳物業の発展が、地域産業の振興に与えた背景を探る(継続)

研究内容

 中小製造業が集積する福井県には、技術、製品、特異な経営スタイルなど多様な面できらりと光る企業も多い。その一例が、福井県坂井市春江町にある株式会社川鋳である。同社の製品群は、普通鋳鉄をはじめとして、FC-350クラスの高級鋳鉄や強度が高く耐圧・耐地上衝撃に優れる球状黒鉛鋳鉄など、高度な技術を要する製品で占められている。ちなみに、鋳造部品の不良率は業界平均で10%と言われるが、同社ではその100分の1(0.11%)に過ぎない。創業当初から「単なる“鋳物屋”ではなく“鋳物メーカー”を目指す」という同社の思いは、職人の技や感性をコンピュータで管理する同社独自の「湯流れ・凝固解析システム」として構築された。ここでいう湯とは溶けた金属を指しているが、その流れにより鋳造部品の内部のどこに空洞ができているのかをコンピュータで予測することで、これにより金属が固まる前にその部分を補強することが可能となった。まさに、最先端技術と職人の合わせ技により業界No1の地位を守り続けているのである。
 では、当地福井県でこうした最先端の鋳物メーカーがいったいどうして誕生したのか。元々福井県は、近世以降、鋳物業が盛んで、昭和時代にはあの繊維産業の基盤を担う織機製造には必要不可欠な素材が鋳物であった。
 本研究は、こうした鋳物業の栄枯盛衰を歴史経路で辿り、繊維産業をはじめとする福井県の主要産業の発展にどのような影響を与えたのかを明らかにしたい。

研究員
  • 南保 勝(福井県立大学地域経済研究所長、特任教授)
研究課題

世界経済およびアジアの動向とSDGs型グローバル戦略に関する研究(新規/継続)

研究内容

新型コロナウイルス・パンデミックは、米中対立やBrexitなど、世界経済やグローバル社会を繋ぐ糸が綻びを見せる中で発生した。奇しくも、これらはグローバリゼーションが抱える課題とさらなる可能性を同時に浮き彫りにしたと言える。 こうした中、本研究では、まず、グローバリゼーションの現状とその行方について「結びつく経済、分断化する社会、対立する国家」といった切り口から考察を行う。同時に、グローバル社会の一員として、SDGs(持続可能な開発目標)に即したグローバル市場への参入の意義と可能性について考察を加える。わけても、「途上国との互恵ビジネスを通じた地域経済の活性化」については、継続テーマとして取り組む。 具体的には、以下の3つのテーマとそこからさらにブレイクダウンした個別テーマに基づいて研究を進める。
(ア)世界経済およびアジア経済の動向
  ・工業生産、世界貿易、直接投資への影響
(イ)グローバリゼーションの行方とアジアや企業の経営戦略への影響 ・新型コロナウイルス感染拡大で露呈したグローバル社会の新たな課題
~中国における「情報の非対称性」がもたらす危うさ~
  ・「米中貿易戦争」にみられる対立・覇権争いの動向とその影響
  ・保護主義の台頭にみられる世界貿易秩序の危機とASEANの対応
   ・TBT協定を嚆矢とする規格認証制度等の「国際標準化」の現状と課題 ・日本を取り巻く地域経済連携協定(TPP11, RCEP, etc.)の動向
    ・新型コロナウイルス・パンデミックによるグローバル・バリューチェーンへの影響と 履歴効果などによる消費者行動の変化
(ウ)SDGs型グローバル戦略の可能性と課題: グローバルな視点から見た、新たな時代に向けての地域や企業の戦略として
  
・国際ビジネスの倫理的課題と企業の対応
   ・途上国との互恵ビジネスを通じた地域活性化

研究員
  • 池下 譲治(福井県立大学地域経済研究所特任教授)
研究課題 若狭地域の地域・産業活性化の実現に向けた産官学連携のあり方に関する調査研究(継続)
研究内容

 北陸新幹線の開通が迫り、若狭地域の産業や経済を再評価する時期にあると考える。若狭地域の恵まれた伝統や文化、自然環境をベースに息づいた地域固有の産業に光を当て、観光のみならず、地域ぐるみの地域活性化を実現するための方策を模索する。
 域外の各機関との緩やかなネットワークと、域内における強いネットワークの構築を意識した産官学連携のあり方を明らかにする。
 加えて、比較検討を行うために、嶺北(大野市、若狭町)において取り組まれている社会実験のモニタリングを並行して行う。

研究員
  • 杉山 友城(福井県立大学地域経済研究所准教授)
研究課題 福井県企業の経営承継の実態に関する調査研究(継続)
研究内容

 中小企業の経営承継問題への関心が高まっている。円滑な経営承継の実現(後継者不在問題の解決)は、日本の中小企業における重大な経営課題のひとつといえる。また、廃業による、GDPや労働市場の縮小は、日本経済に大きなダメージを与えることは言うまでもない。
 そうした中、地域経済を福井県企業の経営承継に関する実態を調査研究することで、地域中小企業における今後の経営のあり方に関する方策とは何か示唆を得る。
 財産承継ではなく、経営承継に焦点を絞っていることが、本研究の特徴である。

研究員
  • 杉山 友城(福井県立大学地域経済研究所准教授)
研究課題 社会経済・統計データの編纂(継続)
研究内容

 地域が直面する様々な課題について、その方向性を見出すための基礎資料として、自治体や支援機関、さらには民間企業のマーケティング活動に資するため、2020年度も社会経済・統計データを作成し、データの蓄積と活用を図る。

研究員
  • 杉山 友城(福井県立大学地域経済研究所准教授)
研究課題 観光まちづくり分野におけるコミュニティによる地域価値の発現に関する研究
研究内容

 日本政府観光局(2020)によると、2019年の訪日外国人旅行者数は3188万人であった。2013年の「日本再興戦略」は、2030年までに訪日外国人旅行者を3000万人にすると発表したが、早々とその目標を達成するに至った。その一方で「観光公害」という言葉が流行した。京都市といった観光都市のみならず、複数の地域では、訪日外国人旅行者が大幅に増加し、マナーの悪化や公共交通の混雑などが発生し、観光と生活の折り合いをいかにつけるかが課題となっている。
 ところで、現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界各地で猛威を振るっており、今年夏に開催するはずであった東京オリンピック・パラリンピックが延期になるなど、日本経済は戦後未曽有の危機に陥っている。特に観光市場はその影響が著しく、3000万人を超える訪日外国人旅行者が一瞬に消滅し、観光業界からは悲痛な声があがっている。
 そのようななか、訪日外国人旅行者に押されて減少傾向にあった日本人旅行者の呼び戻しを図る地域が出てきた。極めて厳しい現況のなか、このことが話題になるのは、訪日外国人旅行者の急増と、それによる観光公害が問題視されてきたからで、新型コロナウイルス感染症は単に訪日外国人旅行者に過度に依存するリスクについて露呈したに過ぎない。
 そこで、コミュニティによる地域資源の価値発現に関するいくつかの例を取り上げた上で、持続可能な観光まちづくりモデルの構築を試みたい。それぞれの地域には「受容限度」があり、それを超えた観光まちづくりでは、逆にその地域の魅力を減じてしまうことを指摘する。そして、観光まちづくりにおいて、その受容限度を見極め、訪日外国人旅行に過度に依存せず、あるべき観光まちづくりの「質」を定めるのは、地域住民をはじめとするコミュニティの重要な役割であることを考察する。

研究員
  • 江川 誠一(福井県立大学地域経済研究所講師)
研究課題 新型コロナウイルス感染症収束後の観光交流に関する研究
研究内容

 新型コロナウイルス感染症の広がりに伴うロックダウンや外出自粛、休業要請等により、人々の自由な移動を前提とした観光交流は大きな影響を受けている。我が国においては、旅館・ホテル、旅行代理店、土産物店は休業要請の対象業種となり、飲食店や交通機関等は社会生活を維持する上で必要な施設とされその対象とはなっていないものの、営業しても閑古鳥が鳴く状況となっている。
 また、我が国おいては移動の制約は課されていないものの、外出自粛に加えて、特に県境を越えた往来の自粛が国や都道府県等によって要請されている。なかでも、大阪府による阪神間における移動自粛要請、山形県による空港やサービスエリア等における県境検温、愛知県における東海道新幹線名古屋駅での降車客検温など、踏み込んだ対策が行われつつある。一部で県外ナンバーに対する差別的な行動も生じており、移動を心理的にためらわせるような具体的な事象が進みつつある。
 安全・安心の両面からの理由により、観光交流の著しい停滞は当面継続し、長期間にわたって需要回復は見込めないものと推測される。感染者数の一時的な低水準が続いたとしても、施政者は次の感染拡大を警戒し全面的な外出自粛や休業要請等の解除はなかなかとりえず、安心が確保されない限り、市民は生活維持に不要不急な観光交流を回避する。
 一方で、特効薬やワクチンの開発等により一定程度の安全・安心が確保された後、観光交流の姿は元に戻るのであろうか。それともこの経験を踏まえた新しい観光交流の形を模索するのであろうか。その場合、安全な非接触サービスを追求した先の観光交流とはどのようなもので、様々な分野でオンライン化が加速しつつあるが、観光交流分野におけるオンライン化はどのように進んでいくのであろうか。本研究ではこれらのことを様々な研究者、実務家、一般市民等と議論しつつ、概念の整理と具体的な対応方策を考察する。

研究員
  • 江川 誠一(福井県立大学地域経済研究所講師)
研究課題 北陸地方の女性就業とキャリア形成に関する研究(継続)
研究内容

 本研究は、昨年度の継続として進めるものである。北陸地域では女性就業の比率は高いが全体的に女性の活用が遅れていると言われる(例:女性の管理職比率が低い)。その要因として企業や団体が女性の活用に積極的でないこと、女性従業員自身の上昇志向が低いことが挙げられた。昨年度は企業の女性活用に焦点を当て、14年前と同じ項目について企業にアンケート調査をすることで、女性の活用への取り組みや女性活用の意識の変化について分析した。その結果企業の女性活用の意識や女性活用の取り組みについて14年前に比べ進捗がみられることを検証した。

今年度は、女性従業員自身の就業意識や上昇志向について同様の調査し分析を行うことで、女性活用の課題を働く立場から明確にしていく。
研究員
  • 中里 弘穂(福井県立大学キャリアセンター特命教授)
研究課題 地域産品の販路拡大に関する研究(継続)
研究内容

 本学の立地する永平寺町は地元産品を“SHOJIN”という統一ブランドで販路拡大や地域の誘客、知名度向上を企画している。本研究では福井県の近隣地域の地域産品の販路拡大や知名度向上策を調査することで地域産品の販路拡大における課題を分析し、地域産品のブランド化、販路拡大への貢献を目指すものである。 調査対象としては「かんてんぱぱ製品」(長野県)、「大門素麺」(富山県)、「加賀棒茶」(石川県)他を考えている。

研究員
  • 中里 弘穂(福井県立大学キャリアセンター特命教授)
 

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