学長からのメッセージ

福井で学ぶからこそ身につく
多様性時代(ダイバーシティ)を生き抜く力

大学選びは偏差値マッチングでいいか
自分とのマッチングこそ大切

 皆さんはどうやって大学を選ぶでしょうか?近年は偏差値で選ぶ人が圧倒的だとかいわれます。偏差値とのマッチングだけで大学選びを決めたりしたら将来きっと悔いるでしょう。自分は何をやりたいのか、自分が学びたいことは何なのか。何が大切なのか、そしてどのように生きていきたいのか。この大学案内を読みながら一度しっかり考えることを私はおすすめします。
 伊藤忠商事の元社長で本学客員教授の丹羽宇一郎先生はご自身の著書『仕事と心の流儀』(講談社現代新書,2019)でこう言います。
 「仕事こそ人生。辛い仕事のなかにこそ、多くの人との出会いがあり、困難があり、喜怒哀楽があり、人を大きく成長させてくれる。それそのものが幸せな人生だ」と。皆さんもぜひ自分らしい生き方というものを考えてみてください。仕事を通して、主体的に生き自己実現を図ることこそ幸せな生き方だと私も思います。AIの時代、今ある仕事はなくなると言われます。今学んだことが、10年先も有効だとは限りません。それでも大学で専門を学ぶ意味はあります。大学で身につけるべきは、「思想と方法」です。文献の読み方や実験の仕方、分析の仕方、解釈の仕方…というのは、対象が変わっても通用するでしょう。本当は自分は何をやりたいのか、AI時代に向かう今、大学で学ぶとはどういうことか、しっかりとキャリアデザインの第一歩を踏みだしてください。大学選びが偏差値とのマッチングではなくなるはずです。本学が学びたい専門や教授陣はもとよりキャンパスの魅力、そして福井県の精神風土・自然・歴史・文化・技術・経済の多様性が生涯を支配する学生生活の舞台にふさわしいかどうかのマッチングで大学を選んで欲しいと思います。

21 世紀はいろいろな価値観を肯定する
多様性・ダイバーシティ ファーストの時代

 工業社会の20世紀。経済効率第一、部分効率第一を目指して環境を軽視し多様性を認めず人工的で画一的な都市社会を招来してしまいました。いま21世紀は環境の世紀です。自然、社会、経済、文化の環境の全てを持続させるためにはそれぞれに多様性が不可欠です。生物多様性によって自然環境は持続するし、人の生き方くらし方など生活多様性によって社会は持続、里山資本主義なども許容する経済多様性によって経済の持続性も担保されます。もうひとつランドスケープ・ダイバーシティ(景観多様性・文化多様性)が注目されます。人工的で画一的な超高層の巨大都市には経済効率はありますが、心豊かでQOLと人間的な生き方は田園と地方都市にあるのです。福井県立大学には公立大学として福井県の持続可能性を支える使命があります。そのためにも型にはまった教育ではなく、学生諸君が主体的で自由な発想ができるよう柔らかい教育を目指し県内企業やアクティブ県民と学生のコミュニケーションの機会を学修計画にしっかり位置づけています。

学びたい専門と活動したいフィールド
多彩な人との出会いのすべてが福井県にはある

 「物事を正確に判断できるためには体験が不可欠である」とは環境教育のクルトハーンの言です。体験には豊かな環境が不可欠です。私たちは「福井県土のすべてがキャンパス」と言っています。福井県は自然、社会、経済、文化のあらゆる面でのダイバーシティに富んだ体験が可能な絶好のフィールドです。時間軸では、恐竜が生きていた一億数千万年という壮大な地球史があり、空間軸では海から山、そして歴史文化の異なる越前と若狭があります。大自然のシンボル九頭竜川は、空間と時間を貫き、地域の産業や文化を育んできました。自然も歴史も文化も技術も、それは大学そのものです。福井県をフィールドに多様な生活体験を持ち、一方で専門を体系的に学ぶことで、多様性時代を生き抜く力を身につけてください。本学は「オープン・ユニバーシティ」を宣言し、キャンパスを広く県民に開放し地域の方々と学生諸君らの生きる知恵の交歓の舞台としています。和紙職人や会社の社長など多彩な人生の先輩との交流が、さらに皆さんを大きく深く成長させてくれるに違いありません。

「地方創生」の極意は
文明と文化の共生にあり

 かつてEUのデラールという委員長が「お金より農業が大切です。農業は文化ですから。」と言いました。農業はアグリカルチュア、園芸はホーティカルチュア、水産はアクアカルチュアです。Culture:文化です。文化は民族のアイデンティティそのものだというのです。20世紀は、工業技術など「文明」を発達させ、工業を起し人口を養いました。それと同時にエネルギーを大量に消費し、経済をグローバル化しました。工業化は都市化をすすめ都市問題や環境問題を深刻化してしまいました。21世紀は文明と文化の共存共生をめざさなければなりません。多様性時代は文明と文化のバランスが重要なのです。新渡戸稲造は「地方学」が大事になると言いました。文化は土地に根付いており、地域について学ぶことが大切ということです。本学では、福井について学ぶ授業を必修科目にしています。福井の素晴らしさ、福井で学ぶことの意味を発見してほしいからです。
 なお本学は2020年4月から「食」と「農」と「環境」をトータルに体験し、起業をめざす人材を育成する新学科を発足させます。さらに続けて水産増養殖を学ぶ学科、公務員や地域リーダー育成のための学部や恐竜を研究できる学部の創設を構想しています。福井県立大学はこれからの多様
性の時代、いかなる場にあっても主体的に活躍できる生き抜く力が身につく学びを提供し、世界に通用する大学でありたいと考えています。


【プロフィール】

学長写真

学長/農学博士 進士 五十八(しんじ いそや)
京都に生まれ、小学校時代、自然豊かな福井を原風景として美への感性を育み、長じて、ランドスケープ・アーキテクト(造園家)として緑のまちづくり、環境学者として活躍。これまでに、日本学術会議会員(環境学委員長)、日本都市計画学会長、日本造園学会長、日本野外教育学会長、東京農業大学長、環境省ほか自然再生専門家会議委員長、美し国づくり協会理事長、福井県立大学客員教授を歴任し、2016年福井県立大学長に就任。福井県里山里海湖研究所長を兼任。
日本農学賞、読売農学賞、日本造園学会賞、同特別賞、同上原敬二賞、日本生活学会今和次郎賞、内閣みどりの学術賞など受賞。GoldenFortune表彰、大日本農会紫白綬有功章、紫綬褒章を受章。
著書に、『緑のまちづくり学』、『アメニティ・デザイン』、『風景デザイン』(学芸出版社)、『グリーン・エコライフ』(小学館)、『日比谷公園』(鹿島出版会)、『日本の庭園』(中公新書)ほか多数。

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