タウリンによる皮膚の保湿およびしわ予防効果のメカニズムをヒト培養皮膚細胞を用いて明らかにしました

タウリンは魚介類などの食材に豊富に含まれるアミノ酸誘導体で、栄養ドリンクの成分としてもおなじみです。タウリンはヒトを含む動物の体内にも存在し、浸透圧調節作用やタンパク質安定化作用等を介して細胞の正常な機能維持において重要な働きを担っていると考えられています。

本学看護福祉学部、村上茂特命教授らの研究グループはこれまでに、マウスにおいて皮膚のタウリン量が加齢とともに減少するが、タウリンの経口摂取により表皮のタウリン量減少が回復することを明らかにしました。また、紫外線(UVB)照射による皮膚の水分量の減少と「しわ」の発生が、タウリンの経口摂取により抑制されることを示しました。今回、ヒト培養皮膚細胞を用いてタウリンの皮膚保護作用のメカニズムを検討し、タウリンがアセトンによる表皮の水分損失を抑制すること、皮膚のバリアの構成成分であるセラミドやフィラグリンの合成を促進すること、また、タウリンは真皮のコラーゲン分解酵素の活性を抑制し、保湿成分のヒアルロン酸の合成を促進することを明らかにしました。

本研究成果は欧州の医学学術誌「Experimental and Therapeutic Medicine」に掲載されました。

1.成果のポイント

〇  ヒト3次元培養表皮において、タウリンはアセトン処理による水分量の減少を抑制し、表皮でバリアとして保湿等で重要な役割を担っているタイトジャンクションを構成するセラミドの合成酵素やフィラグリンのmRNA発現を増加させました(図1①)。

〇  真皮を構成するヒト線維芽細胞において、タウリンはコラーゲンの分解に関与する酵素マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP-1)活性を抑制し、保湿成分のヒアルロン酸合成を促進させヒアルロン酸量を増加させました(図1 (2))。

〇 これらの結果から、タウリンの保湿作用やしわ抑制作用等、皮膚保護作用のメカニズムとして、表皮のバリア成分の増強および、コラーゲンやヒアルロン酸等、真皮の細胞外マトリックス代謝の調節作用が示唆されます。

2.成果の意義                                

タウリンは、哺乳類の組織に存在するアミノ酸誘導体であり、人間の体内には重量で約0.1%存在しています(60kgの人間で約60g)。タウリンは皮膚にも存在し、浸透圧調節作用や抗酸化作用により、皮膚の恒常性維持に重要な役割を果たしているとされています。実験動物を用いたわれわれのこれまでの研究から、タウリンの経口投与は加齢や紫外線(UV)による皮膚の機能低下/障害に対して有効であることが示されています。本研究は、3次元培養表皮および皮膚線維芽細胞を用いて、タウリンの皮膚保護作用のメカニズムを明らかにすることを目的としました。得られた試験結果、表皮においては、タウリンはアセトン処理による水分の損失を防ぐこと、皮膚バリアとして重要なタイトジャンクションを構成する脂質のセラミドやタンパク質のフィラグリンの合成を促進することが明らかとなりました(図1①)。また真皮では線維芽細胞が産生するコラーゲンやヒアルロン酸等の細胞外マトリックスの代謝や合成に対して、タウリンが影響を与えていることが示されました(図1 (2))。細胞外マトリックスの合成低下や量の減少はしわ発生の一因と考えられることから、これらの作用はタウリンの皮膚保護作用と関連している可能性があります。このように、タウリンの表皮と真皮の構成成分に対するタウリンの作用が、保湿やしわ予防効果のメカニズムとして働いていることが示唆されます。

タウリンの皮膚保護作用が経口摂取により認められることは、摂取したタウリンが腸管から吸収され血流を介して皮膚に運ばれ、効果を発現していると考えられます。タウリンが生活習慣病等さまざまな疾患予防や、加齢による体の機能低下の抑制に有効であることが示唆されていますが、魚介類などタウリンを豊富に含む食材の積極的な摂取が、加齢や紫外線による皮膚の機能低下にも有効である可能性があり、今後ヒトでの効果の検証が期待されます。

3.論文情報

研究論文名  Taurine accelerates the synthesis of ceramides and hyaluronic acid in cultured epidermis and dermal fibroblasts

掲載雑誌名  Experimental and Therapeutic Medicine

公 開 日   2023年9月20日

URL: https://www.spandidos-publications.com/10.3892/etm.2023.12211

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