外来種の珪藻 ミズワタクチビルケイソウの近畿地方からの初記録に関する論文が学術雑誌に掲載されました

外来種ミズワタクチビルケイソウの近畿地方からの初記録を報告し、この成果が日本珪藻学会が発行する学術雑誌「DIATOM」に掲載されました。
ミズワタクチビルケイソウ(学名:Cymbella janischii)は北米原産の河川付着珪藻です。国内では、約10年前に九州の筑後川水系から最初に報告されて以来生育地を拡大し、これまで九州、関東および中部地方での出現が知られていました。本種の細胞は0.1~0.3mm程度と小さいものの、細胞がつくる粘液の柄により岩に付着し大量に増殖するため、時として肉眼でも見える大きさの群体を形成します。こうした群体が河床を覆うことで水生生物の生育空間を奪い、また河川景観を損なうなど様々な負の影響が問題視されています。さらなる本種の分布域拡大の阻止に向けた対策を講じるため、国内の分布状況を正確に把握することが急務です。これまで近畿地方から本種の出現は報告されていませんでしたが、滋賀県立琵琶湖博物館との共同研究により、安曇川(滋賀県)で本種の群体を発見したため、本種の出現状況および細胞の生育形態を報告しました。

1.論文情報
  研究論文名:ミズワタクチビルケイソウCymbella janischiiの近畿地方からの初記録およびその生細胞の形態観察
  著者:麦倉 佳奈            (福井県立大学 海洋生物資源学部 学部生)
     Eldrin DLR. Arguelles     (福井県立大学 海洋生物資源学部 大学院生)
     鎌倉 史帆                  (福井県立大学 海洋生物資源学部 大学院生)
     大塚 泰介                  (滋賀県立琵琶湖博物館 総括学芸員)
     佐藤 晋也                  (福井県立大学 海洋生物資源学部 教授) *
                 *は研究代表者

  掲載雑誌:「DIATOM」
  公開: 2022年12月25日
  URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/diatom/38/0/38_49/_pdf/-char/ja

2.成果の意義
外来種の藻であるミズワタクチビルケイソウは、近年日本各地の河川で急速に分布を広げています。この藻が河川に侵入すると、石や川底を厚く覆うほどに大規模に繁茂する事例もあり、河川の景観悪化だけでなく、藻の塊が釣り糸に絡まるなどアユ釣りにも支障がでることがあります。また、アユの餌となる藻が育ちにくくなり定着率が下がることも知られています。本研究では、ミズワタクチビルケイソウの生育域が近畿地方まで拡大していることを初めて明らかにしました。さらなる河川への侵入や拡散を防ぐため、地元水産試験場や漁協とも連携しつつ早期の分布把握と拡散防止対策の実施が期待されます。

ミズワタクチビルケイソウ写真

写真の解説
Aミズワタクチビルケイソウの群体。
B 三日月形の細胞の一端から粘液の柄を放出している。
C 生きている細胞。黄色は葉緑体。
D 細胞から有機物を除き細胞壁のみを観察すると微細な模様が見える。

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