プレミアム商品券に関する考察

江川 誠一

1.前回の「ふるさと商品券」の効果

2010年度に実施された「ふるさと商品券」は、総額1.7億円のプレミアムにより7.2億円の消費が新たに創造されたと推計された。この新たな消費喚起額は、商店の売上増に直接的に貢献するとともに、これら商品の原材料生産等を誘発することにより、間接的に県内外の多様な業種へと効果が波及している。

新たな消費喚起額がプレミアム額を大きく上回った要因としては、期間限定のお得感が、欲しかった商品を購入するきっかけとして、県民の消費マインドを刺激した結果と推測される。すなわち、ペントアップ・デマンド(景気低迷下で抑制されてきた需要)と近い将来の需要が、このふるさと商品券により顕在化した可能性がある。

また、県外やネット販売への消費流出を、地域限定の商品券により食い止める効果と、県下全17地域で実施された消費拡大イベントとの相乗効果も、一定程度あったものと評価される。日常に比べて商店街での利用割合が高くなるなど、消費者が地元商店街に目を向ける契機にもなったのではなかろうか。


2.今回の「プレミアム商品券」に関するポイント

プレミアム商品券の利用により、その期間中は一時的に消費が拡大するとともに、地域小規模店へと一部の消費がシフトする。これを単なる需要の先食いや一時的なものとしないためにも、この効果を好循環させるための工夫が各方面に期待される。

商店側には魅力的な商品づくり・店づくりに加え、ふるさと商品券の取り組み効果を踏まえた積極的な仕掛けづくりも重要になる。地域小規模店は販売促進や商品・サービスの質を向上させるきっかけとするとともに、普段、大規模店を利用している消費者に対し、プレミアム商品券の利用を契機に、大規模店とは違う価値を提供しないといけない。例えば、こだわりの品揃えであるとか、痒いところに手が届くようなサービスであるとか、マニュアルにはない心からのおもてなしやコミュニケーションとかがポイントとなろう。

個人消費はGDPの約6割を占めている。消費税率引上げで落ち込んだ個人消費を、行政による補助で浮上させようとする施策自体は意義のあることである。期間限定や地域限定による効果は確実にあり、福井県が行っている「福井県プレミアム藩札」もまた地域経済への波及効果が一定程度生じるであろう。しかし、行政はそこから一歩進めて、その動きを持続的な確かなものにするための後押しをする必要がある。各地で消費拡大イベント等を仕掛けて、地域のお店とのふれあいや地域の産品を手に取る機会を創出して、「買物の楽しさ」や「地域の商品やサービスのぬくもり」等を再発見することに結びつけることで、息の長い消費拡大につながるのではないか。

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