多死社会の到来

丸山 洋平

敬老の日を前に厚生労働省が9月15日に発表した高齢者調査の結果によると、100歳以上人口は全国で6万7824人となり、10年前の約2倍、20年前の約8倍に増えたという。こうした現象も超高齢化社会の一つの側面であろう。

国立社会保障・人口問題研究所は、新しい国勢調査が実施される度に将来人口推計を更新している。1995年国勢調査を基準とした推計結果(出生中位・死亡中位)では、65歳以上人口は2041年に3,380万人でピークを迎えると推計されていたが、最新の2015年国勢調査を基準とした推計結果(出生中位・死亡中位)では、2042年に3,935万人でピークを迎えるという推計結果となっており、高齢者数がピークを迎えるタイミングはほとんど変化がないものの、その数は約560万人増加している。これはこの20年間で高齢期の死亡率が改善され、今後もその変化は続いて寿命がさらに伸長すると見通せるようになったことによる。2015年の完全生命表によると、65歳の平均余命は男性で19.4歳、女性で24.2歳となっている。定年後も平均して20年近く生き続けるようになっており、そうした寿命の長さを念頭に置いた上で人生設計を考える必要性は増してくるだろう。

超高齢化社会というと、増加する高齢者の生活をいかにして支えるかということに関心が向けられがちであるが、今回は死亡数の増加に注目してみたい。すなわち、超高齢化社会が多死社会であるということである。高齢期の死亡率が改善されたとはいえ、若中年層よりは遥かに高く、死亡の多くは高齢者から発生する。厚生労働省の人口動態調査によると2016年の死亡数は約131万人であり、ここ数年にわたり同調査では年間の死亡数が過去最高を更新し続けている。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2030年頃には年間の死亡数が160万人を超え、それが2070年頃まで続くと見通されている。毎年福井県の総人口の倍以上の死亡が発生する状態が長期に渡って継続する社会がもうすぐやってくる。まさに多死社会の到来である。この多死社会を地域づくりの観点から考えると、墓地不足や火葬場の処理能力等、これまで積極的な議論を避けがちであったようなテーマが喫緊の課題となる。これから先、私たちが生きる社会では高齢者の生活をどのように支えるのかということを考えるのと同時に、増えていく死亡にどう対応するのかということも極めて現実的な課題としてのしかかってくるだろう。

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