生産性の低下を防ぐ!熱中症警戒アラートと熱中症予防対策

福井県立大学 看護福祉学部 准教授 成田光江

 各地で猛暑・酷暑が続く今年の夏は、福井県でも連日熱中症警戒アラートが
発表されています。この暑さは、熱中症リスクの高い高齢者や乳幼児等の熱中
症弱者のみならず、地域の経済活動を担う労働者にとっても厳しいものになっ
ています。
 熱中症警戒アラートは、環境省と気象庁が連携し、熱中症の危険性が極めて
高くなると予測された場合、危険な暑さへの注意喚起と効果的な熱中症予防行
動をとることを促すための情報で、令和3年4月下旬から全国で運用されていま
す。熱中症は、体温が上がり体内の水分や塩分のバランスが崩れる、体温の調
節機能が働かなくなり臓器が高温になることで発症する病気で、重症度により
3つの段階があります。1度:現場での応急処置で対応できる軽傷の症状は、
めまいや立ちくらみ、筋肉痛や筋肉の硬直(こむら返り)、大量の発汗で、2
度:病院への搬送を必要とする中等症は、頭痛・気分の不快、吐き気、嘔吐、
倦怠感、虚脱感などです。3度:入院して集中治療の必要性がある重度になる
と、意識障害、手足の運動障害、けいれん、高体温で身体全体が熱くなります。
 熱中症は、家の中でじっとしていても発症することがあり、気温が低い日で
も湿度が高いと熱中症にかかります。令和4年消防庁による発生場所別の救急
搬送人員をみると、住居が最も多く、次いで道路、公衆(屋外)、仕事場の順
となっています。自宅や職場など直射日光が当たらない場所でも、温度・湿度
管理が重要です。
 熱中症は死に至る可能性がありますが、予防法を知りそれを実践することで
防ぐことが可能です。また、応急処置で重症化を防ぎ、後遺症を軽減すること
ができます。熱中症予防の基本は、脱水と体温の上昇を抑えることです。具体
的には、薄着になる、日陰に移動する、水浴びをする、冷房を使う等です。脱
水予防では、のどが渇く前からこまめに水分を補給すると効果的です。また、
汗をかくと水分と同時にビタミンやミネラルも失われるため、その補給も必要
です。そして、日頃から運動で発汗する習慣をつけ、暑さに身体を慣らすと良
いと言われています。
 熱中症が疑われたときは、応急処置として、日陰やクーラーが効いた涼しい
場所に移す、衣類を脱がせ露出した皮膚に冷水をかける、うちわ等で風をあて
る、首や脇、ももの付け根に氷をあてる、水分と塩分補給を行います。意識障
害のある方は誤嚥(むせ)のリスクがあるため、無理に飲ませないことです。
水分をとることができない、呼びかけへの返事がおかしい、反応がない場合は
迷わず救急車を呼んでください。
 地域の生産性を維持するためには、地域で働く労働者が自らの健康を管理す
ることが重要です。酷暑の夏、私たち一人ひとりの熱中症予防対策が求められ
ます。

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