春節に考える2024年・辰年

福井県立大学 地域経済研究所 教授 佐々井 司

 今月初は旧暦の正月でした。日本では明治維新を機に旧暦が公には使われな
くなりましたが、中国、韓国、ベトナムなどアジアの少なくない国々では依然、
旧暦の正月が新暦の1月1日よりも盛大に祝われています。長い学生時代を神戸
で過ごし、中国・天津の大学院に2年近く留学し、いまも家族が住んでいる横
浜を行ったり来たりしている私にとっては、旧暦のお正月は比較的身近に感じ
られるイベントです。一年の抱負や心構えなどを念じて、気持ちを新たにする
機会が1年に2回ある、と考えれば大変ありがたいことです。とりわけ今年は
現実に能登地震があったことなどから、初詣に出かけようという気持ちにもな
れず、年賀状にもほとんど手を付けられなかったため、春節を迎えた今月に横
浜中華街を訪れ関帝廟や媽祖廟などを参拝し、今年1年が平穏でゆたかな年で
あるよう再祈願してまいりました。
 そして今年は辰年でもあります。「強運」や「お金に困らない」といった言
い伝えのある辰年は、縁起も良いとされています。中国や韓国では辰年に出生
率が上がったりします。景気が良くなる年とも考えられており、株式相場の格
言のなかには「戌亥の借金、辰巳で返せ」というものがあるということで、戌
年や亥年は株価が下がり辰年・巳年は株価が上がりやすいので、戌亥年ででき
た借金も辰巳年で取り返せるのだとか。実際、日経平均株価がバブル越えし、
1989年以来34年ぶりに史上最高値を更新したのがつい先日です。本年7月には、
1万円、5千円、千円札のデザインが2004年以来20年ぶりに刷新されます。パリ
・オリンピックでの「金」のゆくえを、今から気にしておられる向きもあるで
しょう。
 福井でも、来月3月には北陸新幹線の東京-敦賀間開業と共にハピラインふく
いも同時開業し、福井駅周辺エリアにおける再開発も完成形が徐々に見え始め
ていることから、景気が上向くことへの期待感は膨らみます。その一方で、社
会保障関係費用が国と地方の財政を圧迫していることもあり、歳出と税収の間
のギャップは拡大を続けています。このギャップが鰐の口に例えられますが、
龍の口は鰐に由来しているという謂れがあるので、日本経済と辰年とは案外深
い関係にあるのかもしれません。ちなみに、日本における出生数と死亡数のギ
ャップである自然増加数も鰐の口の如く開き続けています。上り竜と下り竜が
あるように、ゆたかさをもたらしてくれる竜も、逆鱗に触れると、私たちを予
期せぬ方向に導くのかもしれません。
 九頭竜川とくろたつさんが身近な存在である恐竜王国・福井にとっても節目
の年になりそうです。今年残りの10か月、皆さんはどのように過ごされますか。
 

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