地域包括ケアシステムと医療・介護連携
成田 光江
少子高齢化が進むわが国では、地域包括ケアシステムを推進している。地域包括ケアシステムとは、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」が切れ目なく一体的に提供される体制のことである。
福井県の高齢化率(総人口にしめる65歳以上の割合)は、2019年10月1日現在30.5%である(全国:28.4%)。2045年には38.5%に達し、おおよそ10人に4人が高齢者になると見込まれている。また、65歳以上の独居高齢者の世帯数は、2015年の2.9万世帯から2020年には3.3万世帯へと増加し、その割合は13.7%となる。さらに現在働き盛りの40代の方たちが65歳を迎える2040年には、独居高齢者の世帯数は4.3万世帯に増加し、割合は17.8%になることが予測されている。
高齢になるに従い、昔は苦もなくできていた日常生活動作に時間がかかるだけでなく、一人ではできないことも増えてくる。また、複数の疾患を抱え、複数の専門機関を受診しなければならなくなる状況も予測される。筆者が県内で行った調査では、高齢者からは「ゴミ出しが大変」「免許を返上したら思うように病院に受診できなくなった」等の声が聞かれた。また、親を介護・看護する働く世代たちからは、「仕事をしたいのに、親の介護に加え病気の世話もしなければならない。子どものお世話もあって休む暇がない」等と発言していた。生活と医療・介護の継続が課題となり、その課題は高齢者のみならず働く世代の課題となるのである。
福井県の医療・介護資源の一つに「メディカルネット」がある。メディカルネットとは、医療と介護を一体的に推進し、かつ適切に支援を提供するための地域のしくみである。患者・家族は、遠方の病院で受けた検査結果等を、自宅近くの診療所等で閲覧できるため、他の病院で受けた検査結果や薬の内容などがわかり、どこにいても適切な診断・治療を受けることができる。また、医療・介護職は、メディカルネットで情報を共有することで、支援を必要とする方や家族の個別にあわせた専門技術を提供することができる。メディカルネットを活用し、「私」や「私の地域に住まう住民」が、必要かつ適切な医療・介護支援を得ることで、生活の質が維持・向上させることができる。
福井県の地域支援システムを、高齢者のみならず障害や難病を抱えた子ども、働く世代にも拡大することで、県民が安心して暮らすことのできる地域がつくられ、同時に増大する医療・介護費の適正使用にもつながる。全年代・全領域対象型の地域支援システムとしての地域包括ケアシステムの推進が求められる。
参考:福井県HP「福井県の推計人口」https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/toukei-jouhou/zinnkou/jinkou.html
国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計』2019年4月.
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