イネの直播栽培を可能にする冠水発芽の仕組みを解明 ー 大学院生の 平野羽留さん ドイツの国際学会でアジアからは唯一のTravel Awardを受賞

 我が国では、米生産の担い手である稲作農家の“高齢化”に歯止めがかからず、慢性的な労働力不足が問題となっています。この問題の有力な解決策として、稲作で最も労力が必要な“育苗と田植え”を省いて、直接、種もみを水田にまく「直播栽培」の普及が検討されてきました。直播栽培は、田植えを手作業で行う発展途上国においても、大幅な省力化の切り札として注目を集めています。しかし、世界の多くの地域で栽培される良食味・高収量品種は、水中で発芽する能力が乏しく、直播栽培の広範な普及には至っていません。

 福井県立大学 生物資源学研究科 大学院生(博士前期課程)の平野 羽留さんは、同研究科 深尾 武司 教授の指導のもと、イネの直播栽培を可能にする「冠水発芽能力」のメカニズムを明らかにし、その成果を9月28日にドイツで開催された植物の低酸素応答についての国際学会で口頭発表しました。  

 本学会は、3年ごとに開催され、当該分野を専門とする世界的な研究者が成果報告をする場であり、今学会のオープニングセレモニーでは、2019年に動物の低酸素応答の研究でノーベル賞(生理医学部門)を受賞されたピーター・ラトクリフ教授(オックスフォード大学)が、「動物と植物における低酸素感知機構の相似性」についての講演をされました。

 今回の研究成果により、良食味・高収量品種の冠水発芽能力を強化し、直播での栽培を可能とする新品種開発への道が開かれました。直播用品種が普及すれば、我が国が慢性的に抱えている稲作農家の労働力不足を解決する決定打となりえると期待されます
 平野さんの発表は各国の専門家から高く評価され、アジアからは唯一のTravel Awardを受賞しました。

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                      学会で発表する平野さんの様子

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                                                         Travel Award の受賞の様子            

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                        学会会場の様子     

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