自己変革と連携、待ったなし

地域経済研究所 杉山友城

 中小企業庁が公表した『2022年版中小企業白書・小規模企業白書』(以下、
白書)のテーマは、「自己変革力」および「事業の見直しと地域内連携」である。
 白書では、新型コロナウイルス感染症の流行や原油・原材料価格の高騰など、
厳しい外部環境に直面する中小企業・小規模事業者が、足元の事業を継続し、そ
の後の成長につながる方法のひとつとして「事業再構築」※1を挙げている。ま
た、中小企業の成長を促す取り組みとして、オリジナルの付加価値を有し、適正
価格が付けられる価格決定力を持つ「ブランド構築」や、従業員の能力開発のた
めの人的資本への投資をはじめとする「無形資産投資」に注目している。
 「事業再構築を行っている企業の3割以上で売上面の効果がすでに出始めてい
る」「ブランド構築・維持を図る取り組みを行っている企業では、自社ブランド
が取引価格に寄与している割合が高い」「計画的なOJT研修、OFF-JT研修をい
ずれも実施している企業ほど売上高増加率が高い傾向」など、東京商工リサーチ
が実施した「中小企業の経営理念・経営戦略に関するアンケート」(2021年2月
)の結果を参考に「事業再構築」「ブランド構築」「無形資産投資」が必要・重
要とした。
 「無形資産投資」に関しては、昨年(2021年7-8月)、福井県立大学地域経済
研究所が福井県から受託して、福井県内企業を対象に行った「福井県企業の事業
活動に関するアンケート」(有効回答297件)でも同様の結果が得られている。
具体的には、未来投資※2の実施の有無とその種類※3を尋ねたもので、「人材育
成を行っている企業ほど、業況が右肩上がりの傾向が強い」ということが分かっ
たのである。
 他方、企業規模が小さくなるほど経営や事業に関する知識やノウハウの不足、
販売先の開拓や確保といった様々な課題に直面していることが予想される。「事
業再構築」「ブランド構築」「無形資産投資」の重要性が理解できたとしても、
すべてを自前で行うことは困難といえよう。
 加えて、DXやGX、健康社会、レジリエンス社会といった社会変化とも向き
合い、自社の利益追求だけではなく、事業を通じて多様化する中長期的な社会・
経済課題を解決していくことが求められるようになる。ゆえに、事業継続、事業
成長の難易度が高まり続ける中では、他者や外部との連携・パートナーシップ関
係を強化することで「自己変革力」を高めていくことが、さらに望まれるのでは
ないだろうか※4。地域企業の「自己変革」「連携・パートナシップ」の強化は、
待ったなしである。

※1 新たな製品やサービスを提供したり、製造や提供方法を相当程度変えるこ
   となど。
※2 数年先の収益確保や増加のために先行して行う投資のこと。
※3 研究開発や人財育成、設備整備、マーケティングなど
※4 福井県立大学では、地域との連携を進めるための全学的な組織として「福
   井県立大学地域連携本部」(http://www.fpu.ac.jp/renkei/)を設置
   しております。「自己変革」「事業の見直し」「人財育成」「共同研究」な
   ど、お困りのことがありましたら「地域連携本部」または「地域経済研究所」
   にお問い合わせください。

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