先端増養殖科学科 瀧澤准教授が参加した国際共同研究がNature Microbiologyに掲載(IgM抗体が腸内環境の調節に重要であることを発見)

2025年7月10日 

魚の免疫が教えてくれたIgM抗体と腸内環境の知られざる関係

~ IgM抗体も腸内の細菌叢と代謝を調節する大事な因子 ~

福井県立大学 海洋生物資源学部 先端増養殖科学科の瀧澤准教授が参加した国際共同研究の成果が、微生物学分野の最高峰の学術誌である Nature Microbiology に掲載されました。本研究では、ニジマスをモデルとして、IgM抗体が共生細菌叢の恒常性維持や代謝調節に関与していることを明らかにしました。本研究において、瀧澤准教授は腸炎モデルおよびIgM欠損モデルのニジマスの作出を担当しました。

なお、本成果は、米国ペンシルベニア大学、ニューメキシコ大学、オクラホマ州立大学、日本大学との国際共同研究の成果です。

【研究概要】

私たちの体は、多様な微生物と共生することで恒常性を保っています。中でも、分泌型免疫グロブリン(sIg)による腸内細菌叢のコーティングは、どの細菌が腸内に定着するか、またその代謝活性に深く関与しています。これまで、哺乳類のsIgAや魚類に特有のsIgTなどの粘膜組織で働く抗体が腸内環境の調節に寄与することが報告されてきましたが、ヒトや魚類の腸内では、IgMも細菌叢の大部分をコーティングしていることが知られていました。これは、ヒトと魚類の間で保存された特徴として、sIgMが腸内環境の恒常性維持の鍵を握っていることを示唆していました。

本研究では、この仮説を検証するためにニジマスを用いてIgMを欠損させたモデルを作出しました。その結果、IgMの欠損により腸内細菌の組織侵入や構成異常が引き起こされ、それに伴い腸内細菌に依存した重度の腸組織損傷や体重減少が引き起こされることが明らかとなりました。また、短鎖脂肪酸や必須アミノ酸を含む細菌由来の代謝産物にも大きな変化が生じていました。

さらに、IgM欠損ニジマスに対して実験的に腸炎を誘発したところ、全身性の菌血症と敗血症性ショックにより高い死亡率を示すことが確認され、sIgMが腸管の保護に重要であることが分かりました。

これらの結果から、sIgMが腸内細菌叢の恒常性と代謝調節における重要な役割を担っていることについて魚類をモデル動物として初めて実証しました。本研究は、sIgMの新たな生理的役割を明らかにし、腸内環境の理解と疾患予防への応用に貢献するものです。

掲載論文タイトル:Secretory IgM regulates gut microbiota homeostasis and metabolism

掲載誌:Nature Microbiology(掲載日:025年5月23日)

(URL:https://www.nature.com/articles/s41564-025-02013-8)

※論文の閲覧には、費用が掛かる可能性があります。

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