食品工学研究室

研究紹介

1.現在の主な研究課題

エビ類の食感と食味の向上に関する研究

エビ類のおいしさを決定づける食感と食味に関連して、貯蔵・加工中に起こる筋肉中の筋原繊維タンパク質の生化学的性質の変化と旨味成分の蓄積メカニズムに関する研究を行っています。また、エビ類の加工に伴う旨味成分の変化についても研究しています。

加工処理にともなう魚肉中の筋原繊維タンパク質の変性機序に関する研究

魚肉を加熱、冷凍あるいは塩漬したときに起こる魚肉中の筋原繊維タンパク質の変性は、加工品の品質を左右します。そのメカニズムについては、これまで主に単離した筋原繊維タンパク質を用いて研究されてきました。しかし、魚肉中の筋原繊維タンパク質の進行様式は、単離したタンパク質のそれらとは異なる点がみられます。そこで、タンパク質の変性制御を通じて加工品の品質向上を図るために、魚肉中の筋原繊維タンパク質の変性の進行様式を研究しています。

冷凍すり身の品質と加熱ゲル形成に関する研究

海外で生産される冷凍すり身の品質改良に向けて、製造過程中の水晒しの度合いと脱水の方法が、冷凍貯蔵中の筋原繊維タンパク質の変性の進行に及ぼす影響について研究しています。また、冷凍すり身の品質が多様化する中で、ねり製品の弾力を強化するための添加物として用いられる微生物由来のトランスグルタミナーゼの作用を最大限に発揮させることをめざした基礎的研究も行っています。

魚肉中における食品成分と添加物の拡散と水産加工品の品質形成に関する研究

塩漬および乾燥にともなって魚肉内部で起こる食塩や水分などの移動と筋原繊維タンパク質の変性の進行との関連を研究し、水産加工品の品質改良に役立てることをめざしています。

若狭地域における水産物の利用と伝統的水産加工品の品質制御に関する研究

小鯛のささ漬けの原料魚キダイの加工特性と製造工程で起こる食塩と酸による筋原繊維タンパク質の性状変化と品質との関連について研究しています。また、サバへしこの品質と安全性に関連して、発酵・熟成中の細菌叢の変化についての研究も行っています。

魚肉の塩蔵・発酵中に生成する生理活性成分に関する研究

サバ発酵食品の製造過程で生成するエキス成分の高血圧抑制作用や脂質代謝の改善効果および血液凝固に及ぼす影響について研究しています。また、これらのエキス成分と食味との関連についても研究を行っています。

食品工学研究室ではタンパク質を対象とした基礎実験から魚肉を用いた実用レベルに近い応用研究まで、幅広く取り上げています。これは、基礎と応用の両面から課題にアプローチすることを意識しているからです。課題へのアプローチの方法は、一般的な食品成分の定量分析の手法に加えて、筋原線維タンパク質の構造と機能あるいはエキス成分の生理作用の解析に用いられる生化学的研究手法、および食品のテクスチャーに関するレオロジー的手法などが主なものです。

2.最近の主要研究業績

(1) 魚肉タンパク質の変性制御と加工品の品質―塩干品の乾燥の進行と品質に及ぼす乾燥温度の影響.大泉 徹.Food and Food Ingredients Journal of Japan, 222,120-127(2017).
(2) キダイ酢漬け魚肉の低温貯蔵に伴うドリップ生成に対する食塩の抑制効果と塩漬魚肉中の筋原繊維タンパク質の変化. 奈須亮耶,松川雅仁,大泉 徹,加納竜一,大田慎司.日本水産学会誌,82,349-357(2016).
(3) 冷風乾燥と焙焼に伴うマアジ塩干品の呈味成分の変化. 原田恭行,大泉 徹.日本食品科学工学会誌,63, 117-126(2016).
(4) クルマエビ筋原繊維タンパク質Ca-ATPaseの熱失活様式.佐々木崇之,松川雅仁,大泉 徹.日本水産学会誌,81,836-842(2015).
(5) 魚肉タンパク質の特性と水産加工, 第2章タンパク質ハイドロコロイド,第II編 新規素材開発と応用.大泉 徹.「食品ハイドロコロイドの開発と応用」(西成勝好監修). シーエムシー出版, 東京, 130-136(2015).
(6) 3.1タンパク質, 3干物の科学. 大泉 徹. 「干物の機能と科学」(滝口明秀・川﨑賢一編).朝倉書店,東京, 40-48(2014).
(7) 3.3エキス, 3干物の科学. 大泉 徹. 「干物の機能と科学」(滝口明秀・川﨑賢一編).朝倉書店,東京, 57-65(2014).
(8) 10.Manufacture of kamaboko, chikuwa, tenpura, and hanpen,IISurimi seafood products. T. Ooizumi. “Surimi and Surimi Seafood ( the third edition)” edited by J.Park, CRC Press , New York, 271-283(2013).
(9) 4.9.7 塩蔵品,4.9 水産加工品各論,4 水産物の化学と利用. 大泉 徹.「最新水産ハンドブック」(島 一雄他編).講談社,東京, 455-457(2012).
(10) Effects of microbial growth inhibition by antibiotics on the production of taste-active components during processing of heshiko produced by aging of salted mackerel with rice bran. Y.Kosaka and T.Ooizumi. Fisheries Science, 78, 735-742(2012).
(11) Microfloral and chemical changes during processing of heshiko produced by aging of salted mackerel with rice bran through conventional practices in the Wakasa Bay area, Fukui, Japan. Y.Kosaka, M.Satomi, A.Furutani, and T.Ooizumi. Fisheries Science, 78. 463-469(2012).
(12) Hypertensive effect of rice bran discarded after heshiko processing. K.Itou. Food Science and Technology Research, 18, 99-105(2012).
(13) マサバを原料とするへしこ及びなれずしの製造過程における脂質酸化の進行と抗酸化活性の変化. 春野(今津)涼子,赤羽 義章,大泉 徹. 日本水産学会誌,77,674-681(2011).
(14) バナメイエビの冷凍貯蔵性に及ぼす冷凍前20℃処理の影響.小山法希,松川雅仁,島田昌彦.日本水産学会誌,77,223-239(2011).
(15) マサバへしこの製造過程における呈味成分の生成に及ぼす熟成温度と食塩含量の影響.小坂 康之,木下 由佳,大泉 徹,赤羽 義章.日本水産学会誌,76,392-398(2010).
(16) Hydroxyl radical and ferry-generating systems promote gel network formation of myofibrillar protein. Y.L.Xiong, S.P. Blanchard, T. Ooizumi, and Y. Ma. Journal of Food Science., 75, C215-C221(2010).

魚肉タンパク質のゲル化を利用した各種のねり製品
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ゲル化の過程を解析する動的粘弾性測定装置
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