必須遺伝子は必須だった -染色体に「塗り絵」することで変異が遺伝する条件を解明-

理化学研究所(理研)仁科加速器科学研究センターイオン育種研究開発室の阿部知子室長、石井公太郎協力研究員(研究当時、現客員研究員)、風間裕介チームリーダー(研究当時、現客員研究員、福井県立大学生物資源学部教授)、平野智也協力研究員(研究当時、現客員研究員、宮崎大学農学部准教授)らの研究チームは、重イオンビームで誘発するDNA欠失変異の最大値や、染色体構造変化を決めるのはゲノム中に散在する必須遺伝子であることを実証しました。

これまで、重イオンビームが誘発する欠失変異では、ビームの線エネルギー付与(LET)[3]が重要であり、誘発する変異サイズはLETに依存し、LETが大きいほど変異サイズも大きくなると考えられていました。

今回、研究チームはLETが100~290キロ電子ボルト/マイクロメートル(keV/μm)では欠失の大きさに差がないことを明らかにしました。この原因を探るため、シロイヌナズナのゲノムに対して、孫世代に遺伝した欠失と必須遺伝子の位置を、塗り絵のようにして染色体上にマップしたところ、必須遺伝子を含む欠失は次世代に遺伝しにくいことが分かりました。また、確実に遺伝する欠失の大きさは必須遺伝子間の距離よりも小さいことも判明しました。これらのことからゲノム中の必須遺伝子の位置が欠失の大きさの上限を決めることが示唆されました。さらに、染色体構造変化のつなぎ目は必須遺伝子を避けるように生じていることも明らかになりました。本研究成果は、必須遺伝子の分布から欠失の最大値を推定し、適正なLETを選択することにより、重イオンビームを用いた突然変異育種のさらなる効率化に貢献すると考えられます。

本研究は、科学雑誌『Frontiers in Plant Science』オンライン版(4月17日付:日本時間4月17日)に掲載されました。

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