「N-クロロタウリン」という化合物が肺炎の重症化を抑えることを発見しました
本学生物資源学部の伊藤崇志教授らの研究グループは、大腸菌が作る毒素LPS(リポポリサッカライド)によって誘発した肺炎に対してN-クロロタウリンという化合物が肺炎の重症度や全身反応のひとつである筋萎縮を抑制することを発見しました。
ウイルスや細菌への感染によって起きる肺炎は、まれに重症化して重度の呼吸不全となったり、全身での重度の炎症を引き起こしたりして、命を脅かします。一昨年来世界に蔓延する新型コロナウイルス感染症においても重症化によって多くの人が命を落としました。現在、重症化した炎症の治療には過剰な免疫反応を抑えるためにステロイド薬やサイトカイン阻害薬が使用されますが、今回の研究成果から、安価かつ簡単に化学合成が可能なN-クロロタウリンが重症化抑制の選択肢となる可能性が示されました。
この研究成果は、国際学術雑誌「Metabolites」にオンライン掲載されました。
〇成果のポイント
・ マウスの肺にLPSを注入して誘発した肺炎の病態モデルに対して、N-クロロタウリンを注射しておくと肺炎の重症化とサイトカイン(※)の発現が抑制された。
※サイトカインとは炎症部位から分泌されるタンパクで、ホルモンのように標的となる細胞の生理機能を調節します。今回の研究では、炎症症状を引き起こすサイトカインを解析しました。
・ 肺炎を患ったマウスは全身反応として筋肉の萎縮が見られるが、N-クロロタウリンを注射されたマウスでは筋肉の萎縮が緩和された。
・ 本研究の成果により、N-クロロタウリンはウイルスや細菌への感染によっておこる肺炎や全身の炎症並びに重症化を抑制できる可能性が示された。
クロロタウリンの抗炎症、抗筋肉萎縮作用
マウスにクロロタウリンを注射しておくと、細菌由来リポポリサッカライドによって誘発される肺炎や併発する筋肉の萎縮が抑えられた。
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