本学地域経済研究所に関係する教員が、株式会社福井銀行(頭取 林 正博)と共同で「新しい〈地方(ふるさと)〉を創る―未来への戦略―」を執筆し、発刊いたしました。

 人口の減少は、日本の大きな地方問題のひとつになっています。政府や地方公共団体は、「地方創生」を掲げ、人口減少を前提にした政策を採るようになってから何年も経ちましたが、解決の糸口がいまだ見つからないままの状況です。
 地方とは、「弱い存在」であり、「守らなければならない存在」であり、「活性化、創生させなければならない存在」であるという前提を多くの人たちは持っています。

 しかし、私たち(筆者ら)は、地方とは、ポテンシャル(可能性)を秘めた存在であり、このポテンシャルを呼び覚ますことができるのは、政府の政策ではなく、その地に暮らす人たちの力量と行動にかかっているのではないかと考えています。
 そこで、幸福度ランキング日本一・福井県の人や暮らしや産業などに光をあて、福井県の事例から人口減少時代、コロナ禍時代における地方のあり方を模索するというものが本書です。

 東京一極集中の是正や少子化対策という地方創生の取り組みのみならず、地方に住む人たちによって内発的・自発的に地方を元気にする運動(ムーブメント)が起こることが、人口減少時代・コロナ禍時代には求められています。何よりも、私たちが幸福を実感できる場が創造されることが「望まれる未来の地方の姿」と感じます。

 DX化やエネルギー革命など、今後の日本や地方に押し寄せる波とは何か、私たちが幸福を実感できる要素は何かの整理から出発し(序章・第1章)、なぜ、人は生まれた土地を離れるのか(第2章)。実は離れた土地には暮らしやすさという魅力があること、地方とは女性がイキイキと楽しく暮らせる場であること(第3章)、地方には文化による経済的自立を可能にする地域資源があること(第4章)。そして、地域資源を活かし幸福実感が得られる「新しい<地方>を創る」ための視点とは何か(第5章・終章)をまとめました。
 また、福井で起こっている事柄を紹介するために5つのコラムを掲載しています。北陸新幹線の延伸が迫っている中での福井市中心市街地の取り組み、福井での福井県外企業における福井サテライトオフィスの開設、福井に移住してきた家族の体験談、よそ者が取り組む産業観光イベント、そして、地域金融が抱える思いとその実践についてです。

 福井のことを知ってもらいたい。いま暮らしている地域や地元に関心を持ってもらいたい。広く多くの方々に、地方や地元を見つめ直すきっかけを提供したいとの思いを込めました。是非、お読みいただければ幸いです。

【書籍概要】
書名:『新しい<地方>(ふるさと)を創る―未来への戦略―』
発行日: 2022年3月10日
執筆者:杉山友城(福井県立大学地域経済研究所/准教授)
    塚本利幸(福井県立大学看護福祉学部/教授)
    成田光江(福井県立大学看護福祉学部/准教授)
    福井銀行地域創生チーム
    井上武史(東洋大学経済学部/教授)
    栃川昌文(株式会社ビジネス・アイ/代表取締役)
もくじ:
    まえがき
    序章 人口減少時代の地域づくり・地方づくりへの視座―新しい地方モデルの創造に向けて—
    第1章 福井はなぜ幸福なのか?―獲得・親和・学習・防衛、そして自助・互助―
    【column1】福井市中心市街地の取組み
    第2章 データでみる「出る人、残る人、戻る人」
    【column2】地方移住とサテライトオフィス~
    第3章 子育て×介護×家事×しごと!―地方に暮らす女性の生き方・楽しみ方―
    【column3】福井移住経験談「Iターン×子育て×しごと」
    第4章 稼げない地方、稼げる地方―生産、消費、そして生産性―
    【column4】まちの主人公は自分
    第5章 こんな地方だったらいいな!―私たちが考える「新しい地方」とは何か―
    【column5】 地域資源と金融
    終章 新しい地方づくりに向けた政策への展望
    あとがき
       表紙
<お知らせ>
福井県立大学の令和4年度前期講座(5月9日スタート)で、本書籍の執筆者の講座(動画)もございますので、お時間がありましたら、こちらも受講してください。

福井県立大学公開講座のホームページはこちら

Contact このページのお問い合わせ先

経営企画部 連携・研究課
〒910-1195 福井県永平寺町松岡兼定島4-1-1 
TEL : 0776-61-6000 FAX : 0776-61-6012
E-mail : kenkyu@fpu.ac.jp